1.習慣・風習の内容
御神酒口
2.習慣・風習が行われる状況
御神酒口というものをご存じですか。正月に御神酒徳利の口元に挿す装飾品のことです。神事にかかわる縁起物として、結婚式や上棟式などにも用いられてきました。奈良県吉野郡下市町では、その御神酒口が300年以上前の昔から作られてきました。カンナで薄く削った経木の溝同士を組み合わせて美しい曲線を生み出していきます。昔はさまざまな地方で作られていたのですが、一般家庭で神棚が徐々になくなり、神事に対する習慣が薄れていくのにともなって、あまり見かけなくなっていきました。そして、現在残っているのは、芸術としての完成度も高かった、下市町をはじめ、長野県松本市など一部の地域のみとなってしまいました。
3.習慣・風習の普通とは違うところ
御神酒口は地域によって竹や檜、紙など、その素材も、作られる形もさまざまです。下市町で作られている御神酒口は吉野杉、檜が使われることが多く、「水」と「火」を表現したものが良く知られています。「水」と「火」というのは、人間の生活の根幹を支えるもので、口元の丸み、そこから縦に伸びる様がそれを象徴しています。制作はもちろんすべて手作業で、職人から職人へ伝統が継承されていきました。
下市町で主に使われている吉野杉は、奈良県中南部が産地で、日本三大美林の一つに数えられる、日本有数のブランド材としても知られています。年輪幅が狭く、すっと美しく直線を描く吉野杉は、現在では最高級品として扱われていますが、ちょうど御神酒口が下市で作られるようになった江戸時代から昭和初期にかけては、上方で盛んになった酒造りに対応するための酒樽や樽丸の材料として植栽されていました。元々日本酒とのつながりの深い素材であり、それが神様にささげる酒を美しく飾っているという歴史に、何かの縁を感じずにはいられません。
4.エピソードや歴史など
御神酒口を飾る意味というのは、諸説あります。正月を迎えた家々に飾られ、その年の五穀豊穣、家内安全を祈念するものという一般的なものから、神様を家に招き入れるためのアンテナのような役割を果たすために飾られるようになったなど、さまざまです。神棚や御神酒徳利がどの家にもあるわけではない現代ですが、次の正月には、一つの芸術としても高い完成度を誇る御神酒口で部屋を飾ってみてはいかがでしょうか。すてきな一年が送れるかもしれませんよ。
5.参考URL