TOP> 地酒の旅 蔵元紀行
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それでは具体的な酒造りの素材について、その特長を説明してもらいましょう。「当社の仕込み水は、伏見七つ井の水脈の一つである“白菊水”です。その品質は、中軟水。鉄分やカルシウムの少ない酒造りに最適の水です。良い麹を造るには、蒸米がポイント。その水には、もちろん白菊水を使います。蒸した米を見て、触って、味わって、自分の五感を総動員して、最高の蒸米を体で覚えなければいけません。だから私は、蔵人には『暇があれば、蒸米を手にしろ』と口酸っぱく言い続けています。蒸米がおかしいとなると、洗米の仕方を変えてみようか、浸漬時間はどうなんだ、外気温はどうだった、湿度はどうだ、などと考えをめぐらせるはずです。それが酒造りの大前提だと言っていいでしょう。これだけは機械設備に任せず、人間が肌で覚えるしかない分野です」 酒造りの基本は麹造りですが、そのまた根本は“原料処理”にあると伊藤部長は言います。つまり米粒の磨きから洗い、浸漬、そして蒸し上げの段階で、ほぼすべてが決まってしまうのです。
そんな酒造好適米についても、もちろん技術者としてのこだわりはありますが、今年はこの米を主として使うと山本社長に命じられれば、その米に全力を注ぐのが自分の使命だと、いかにも技術肌の達人としての回答が返ってきました。ちなみに同社では、精米歩合40%の大吟醸クラスには山田錦、50%精米の中吟クラスの酒には八反錦や五百万石といった酒造好適米を使用し、そのほかにも酒造適正の高い酒米を使用しています。 |
伊藤部長が近年懸念している問題の一つに、酒造好適米の生産量
の減少があります。つまりは、国の減反政策による酒米変化と、それによって仕込む製品を調整しなければならないという、何とも不条理な関係です。
「近年の清酒需要の減少から、本醸造クラスの製品が減りつつあります。普通
酒と吟醸酒の間にあって原料にさほど高級な米を使用しませんから、このクラスの米の生産が打ち切られたりすることもあるのです。当然、蔵元としては製品を止めるわけにはいきませんから、これに変わる好適米を探すのですが、以前と同じ酒質や味わいを再現するとなると難しいですね。米の購入には昔から業界ルートが決まっていますけど、ここに至って伏見という銘醸地でも、契約農家との直接取引という購入手段も課題になっているようです」伊藤部長の情報によれば、国内の大手メーカーではオーストラリアやベトナムなど海外からの米の輸入がすでに具体化しつつあるとのこと。その状況をしっかりと観察しながら、厳しい現状に対していくことで、次なる山本本家の新しい酒造りが見えてくるはずと自信を覗かせます。 若手の成長も著しく、まずは安心して任せられるスタッフも増えてきたと、表情をほころばせる伊藤部長。その双肩に、次なる神聖ブランドの登場を期待しましょう。 |