

お福酒造の岸 専務が「あったかくて心地良くって、地元のみんなが集うお店なんですよ」と連れて行ってくれたのは、蔵元に近い“宮内”の町。しかし着いてみれば、ごく普通の住宅街で、しかも専務は一軒の民家に入って行きます。
ちょいとガレージを回ると、そこには居酒屋風の玄関が。顔を見合わせる取材スタッフの前で岸 専務がガラリと扉を開ければ、そこにはあっ!と驚く空間が広がっていました。BARラウンジ風の洒落たカウンターと思いきや、その後ろには、スポットライトが瞬くカラオケステージ。奥には、宴会もできそうな御座敷がデーンと構えているのです。「ここって何? スナックなの?居酒屋なの?って、よく訊かれるんですよ。でも、皆さんにいっぱい楽しんでもらいたくてね。あれこれと考えているうちに、何でもありの居酒屋になっちゃったの」
福々しい笑顔でそう話してくれたのが、ここ「みづよし」の女将・吉田 政子さん。 和服の似合うふっくらとした容貌と優しげなまなざしは、いかにも“長岡のお袋さん” 的な印象です。

政子さんは、元はサラリーマンの御主人と暮らしていた平凡な主婦。若い頃は、企業の支店長で転勤ずくめの御主人とともに、全国各地に移り住んだそうです。
「主人が昭和53年(1978)に急逝しまして、それからが苦労の始まり。東京から故郷の宮内へ2人の子供を連れ帰り、昼は正社員、夜は居酒屋のアルバイト。辛さ、しんどさに負けまいと、その日を暮らしていくのが本当に必死でした。でも、ありがたいことで、家族や兄弟、そして地元の皆さんに助けられて、ようやく家を手に入れ、ここにお店を出すことができたのです。亡くなった主人の名が“みつよし”で、東北訛りだったから“みづよし”なんですよ」
苦しい時代の身の上話しを、明るい笑顔で打ち明ける女将さん。そんな朗らかな雰囲気も、地元の常連客に愛される「みづよし」の魅力のようです。
「みづよし」自慢の手作り料理は、美味しくてお酒にピッタリ! しかもお値段は「これでイイの?」と疑ってしまうほどリーズナブルなのです。オードブルに始まり、お刺身から揚げ物、焼物、酒の肴、そしてラーメンまでと、なるほど「みづよし」一軒あれば、夜のフルコース! いつものハシゴ酒をしなくていいわけですね。
そんな厨房を切り盛りするのが、政子さんの長男・健治さんです。東京のサラリーマン生活を捨ててお母さんの店を継いだ理由を訊けば、「この店は皆さんの安らぎの場ですが、お袋にとっても同じなんです。心の支えであり、生きがいですから……。一生懸命生きてきたお袋に感謝して、その夢を引き継ごうと思ったのです」と、政子さん似の目元をほころばせます。
人生経験豊富な政子さんだけに、1本のビール、1盃の酒のサービスは当たり前。儲け主義に走らず、みんなを幸せにする、温かいお店がモットーなのです。
あれ? これはどこかで聞いたフレーズ。なるほど! お福正宗をたっぷり楽しめる「みづよし」も、誰にでも福を招く、幸せの酒場だったのですね。
味よし!酒よし!歌よし! 宮内の「みづよし」に、ぜひ、いらっしゃいませ。