

JR上越市の駅前から市街には、雪除けの「がんぎ」が連なっています。
雪国ならではのその道を数分歩けば、風格と趣を香らせる料亭「やすね」に辿り着きます。
「やすね」の名の由来を、女将の 安田 美智子(やすだ みちこ)さんに訊ねてみました。
「やすねは、私で五代目になりますが、初代の 安田 音次郎(やすだ おとじろう)の名前に縁るものです。元々は美術商を営んでおりまして、料理屋を始めたのは二代目、明治27年(1894)からでございます」
来年で創業110年を迎える「やすね」は、当初はお汁粉や甘味などを供する小さな茶屋だったそうです。
安田さんはこの屋に嫁いで40年になりますが、昭和37年(1962)には店の危機に直面しています。火災で、「やすね」の家屋がほぼ全焼してしまったのです。
「大変でしたが、お得意様の応援もあって、結婚式場や会議・宴会場を兼ねる料亭として再出発することができました。景気も良くなっていた時代でしたし、地元企業の皆様のご研修や、都会企業の皆様のご出張が増え、ご愛顧を賜りました」
そこかしこにしつらえられた和の情緒、純日本風の味とサービスに、最近は、海外からのビジネス客の利用も増えているようです。
「やすね」のモットーは、“お客様が望んでいらしゃっることを、十二分にして差し上げる」ことだそうです。安田さんは、常日頃からこれを実践し、社員の手本となってきました。
それには、お座敷に入った瞬間、その席のお客様はどんな目的でいらしているのかを把握しなければならないそうです。接待の席では、そんな気配りが場の流れを左右することにもなります。
「私どものサービスにマニュアルはございません。むしろ、お一人お一人のお客様ごとに違うものでございます」
そう語る安田さんの雰囲気は、さすが女将の貫禄。
お客様の目的を感じ取る秘訣は?と質問すると「それは、やはり“勉強と経験”でございましょう。私も最初は何も知らない素人でしたから、真っ白のまま、お客様に教えていただいたことが良かったのでしょうね。師はお客様です」と、おだやかな笑みを浮かべるのでした。
老舗中の老舗「やすね」、庭園風の中庭を眺めるロビーも素敵です。
上越の宴の席にふさわしい、名門の会席料理をあなたも堪能してみませんか。
上越の旬を生かした「やすね」の会席料理。逸品の味と呼ばれるその膳を、調理部顧問の辻 康久(つじ やすひさ)さんに解説してもらいました。
辻さんは15歳の時から日本料理一筋に生きてきた、この道33年の達人。ご自身も日本酒が大好きとあって、上越の酒にふさわしい地元の旬素材を選ぶことを心がけています。
今日のおすすめ料理は、「菊の膳」です。







