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株式会社萬屋醸造店 ~蔵主紹介

ノスタルジックな風情を湛える、萬屋醸造店の社屋。
それは“旧家の御屋敷”と表現する方がふさわしく、蔵棟の奥からは、杜氏たちの酒造り唄が聞こえてくるような雰囲気です。
文化人や芸術家たちにこよなく愛される純米酒「春鶯囀」の魅力を、その閑静な雰囲気の中で、八代目蔵元・中込 源一郎 代表取締役社長に訊ねます。

「私どもは、地元産の米で造ってこそ、本当の地酒だと思っています。もちろん、『どこからでも米を買える時代だし、何もリスクを背負って米作りから始める必要などない』との声があることは否定しません。そうした理屈は十分に分かるのですが、それでも萬屋醸造店の酒は、本当の地酒の持つ意味にトコトンこだわっていきたいのです。そうでなければ“地酒屋”としての意味がありませんし、地酒業者としての誇りも失われてしまうように思えるからです」
小難しく言うとそうなるのですが、理屈はどうあれ真っすぐな気持ちとして、自分たちは地元産の米と地元の水で酒を造りたい。ただ単に、そう思うだけなのだと語ります。

ところで、萬屋醸造店は滋賀県産の玉栄に惚れ込み、これを増穂の地で植しているわけですが、その理由は何故なのでしょうか。
「米は、その土地に合うかどうかが問題となります。県内では、北巨摩地区で長野県の酒造好適米・美山錦を栽培していますが、しかし、この米は標高の低い増穂町には合いません。このため、いろいろと試した結果 、滋賀県の酒造好適米・玉栄が良いということになり、地元農家との間に栽培委託契約を結ぶことにしたのです。そして、櫛形山の麓の水田に清冽な伏流水を引き込み、玉 栄の栽培を始めました。初年度(平成8)の作付け面積は50アール、収穫高3トンでした。これを60%精白しますから、1升瓶にして、たかだか2,400本が出荷されたに過ぎませんでしたが、近年の収穫高は16トンを超えるようになりました」

そして、米を自前で作るとなれば、精米も自家精米したいというのが当然の帰結だと、中込社長は言葉を続けます。
「通常、コストの関係から精米業者に委託するケースが多いのですが、今どきはコンピュータ制御の精米機ですから、導入したとしても深夜労働が不要になる分、コストの面 でも十分に引き合うことになります。それに何より、委託精米だと朝8時~夕5時の作業時間がネックです。60%精白だと、作業の途中で止められてしまいます。米というのは、精米すると熱を持つのですが、その熱をもった米が翌朝まで放置されると、冬の寒気のなかで冷え込み、その冷えた米を再び精米機で立ち上げたりすれば、結果 は誰の目にも明らかです」
自社作業によってつぶさに管理しなければ、決していい精米など期待できない。こうした点から、萬屋醸造店では自家精米にこだわるのだと、中込社長は胸を張ります。

さらに今ひとつ、萬屋醸造店の方針として、造るお酒のすべてを純米酒にするという計画があります。現在、全量 の79%がすでに純米酒ですが、これを何年か後には、100%純米酒にする計画を進めています。
それほどまで、純米酒にこだわる理由は何なのでしょうか。
「簡単に言うと、添加物のないピュアな酒を造りたい、ただ、それだけのことなのです。当社では、昭和51年(1976)に醸造用糖類の使用を全廃しています。これは大手企業との値引き競争の愚を悟り、『無糖で、理論武装しよう』ということだったのですが、全量 純米酒プランも、当社のような石高(1,700石)なら可能だろうとの判断が働いたことも事実です。昨今の市場をにらんだ、差別 化戦略の一環であったわけです」

なるほど、ニッチな戦略で本物志向のファン作りを目指したわけですが、萬屋醸造店の「ギャラリー六斎」にも、そんな思いが込められているようです。
ここは、1階が有料試飲コーナーのほか、展示販売や喫茶室。2階はギャラリーで、同社所蔵の美術品や書籍を中心とした企画展、さらには地域アーティストによる展示イベント会場として提供されています。
ちなみに毎年10月には、同社と縁の深い「与謝野 晶子展」が計画されるとのこと。
「当社のファンづくりが最大の狙いですが、そのファンの中からオピニオンリーダーをどう育て、体制としてどう組織化していけるかが課題です」
中込社長の言うように、このギャラリーが担う役割は大きく、単なる試飲や展示スペースだけに終わらず、地元活性化に向けた意義のあるユニークな活動が期待されています。

地元の米、地元の水を使って、無添加でピュアな本物の地酒を提供したい、それが萬屋醸造店の酒造りにおける基本哲学でした。
「ですから当社では、全国鑑評会で金賞を取るために特殊な酵母を使って吟醸香をプンプンさせる類いの、いわゆる金賞狙いの酒を造る気は毛頭ありません。60%程度の精白で、オーソドックスな9号酵母を使って、それでも酒蔵としての個性ある酒造りに邁進したい。それが、正直な気持ちなのです」
萬屋醸造店の仕込み水と酒米は、手つかずの山里の中から生まれます。
そして、中込社長の素直な思いもまた、豊かな増穂町の自然の中で育まれるのでしょう。