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皇国晴酒造株式会社 ~水・米・技の紹介

岩瀬社長の片腕として、全幅の信頼を与ってきた 桑原 敏明 杜氏は、2007年の今年、酒の道一筋に51年目を迎えます。皇国晴酒造の門をくぐってからは、34回目の仕込みです。その間、桑原杜氏の酒造りを見つめ、励まし、魂を注いだのが、岩瀬家の清水でしょう。
1日約270トンも湧き出すこの水は、米洗いから蒸米、酒母、モロミはもちろん、火入れや洗瓶、製造現場の洗浄まで、終始一貫して皇国晴酒造を支えている母なる水と言えましょう。年間を通 して13℃と安定している水温は、そびえるほどの貯蔵タンクにも、惜しげもなくかけられています。

これぞ、まさに天然の冷蔵システムであり、黒部の恵みの中で醸される地酒の真骨頂でしょう。
そんな清水と長年付き合ってきた桑原杜氏は、最高の蒸し米ができる中硬水だと自画自賛します。
「私の酒造りの基本は、まず、蒸米に徹底的にこだわること。上質の蒸し米ができなければ、いくらその後工程を頑張ったところで、良い酒にはなりません。それは、蒸しの成功が素晴らしい麹を生み、最高の酒母となるからですよ」
では、そのこだわりの蒸米から、解説してもらいましょう。

皇国晴酒造では、吟醸造りの上質酒は、連続式蒸米機ではなく、丸型の小さな甑を使った300kgほどの仕込みを繰り返します。
この方法は、大型の連続式蒸米機に比べて仕上がりにムラが少なく、麹菌のハゼ込みが均等になるのだと、桑原杜氏は語ります。
「麹室で発酵させている間、麹をつぶさに観察しますが、この蒸し方の米は優等生です。こちらの思った通 りに成長してくれて、理想的なハゼ込みが得られるんですよ。この第一段階で品質が安定していれば、おのずと、酒母段階でもモロミ段階でも、リスクは少ないわけです。もちろん、洗米や限定給水には最新の注意を払っています」

杜氏や蔵人は、麹蓋を使った切り返しや仲仕事などの際に、その品質を目と手と匂いで確かめます。その際、麹の良否が判ってくると、やはり蒸米の大切さを何度も思い知らされるものだそうです。

桑原杜氏は、これまで多くの鑑評会金賞を受賞しています。
その秘訣を訊ねてみると、酵母を使いこなすエキスパートであることが分かりました。
「香りの高い大吟醸がもてはやされた10年ぐらい前、86酵母という特別な酵母が人気でした。当時の全国新酒鑑評会に出品される吟醸酒の多くは、この酵母を配合したものでした。しかし、86酵母を配合すれば、香り立つのですが、酒の味がダレてしまう弊害があったのです。それじゃ当社は、金賞を狙う究極の酒と、誰でも美味しいと感じてもらう酒のどっちを造るべきなのか。もちろん、後者でなければいけなかったわけです。まあ、私の欲は、ちょっと我慢してですね(笑)」
そして、無欲の金賞が、万人に喜ばれるうまい酒造りから誕生したわけです。
自分の技と腕を生かせる86酵母に変わる品種を、桑原 杜氏は模索しました。香りを求めるなら9号熊本酵母が定番でしたが、それでは自分らしくないと、7号系で仕込んでみる。また純米酒では、10号小川酵母をだけでなく、やや味にふくらみの出る12号系も扱ってみて手応えを感じました。
そんな試行錯誤の酒造りが今でも日々の楽しみだと、桑原杜氏は、老練な笑顔をほころばせてくれました。
「貴様と俺とは、同期の桜」。そんな刎頚の友だったブレンダーの 田中 政雄 氏は他界しましたが、彼のためにも、まだまだ桑原杜氏に酒造りを続けて欲しいと、岩瀬社長は望んでいます。
その田中氏を後継した若き技術者も、桑原杜氏を師と仰ぎ、皇国晴酒造の新たな美酒の調合を修行中です。
生涯、皇国晴酒造……若き日のその誓いを、桑原杜氏は今日も胸に秘めて、櫂棒を握りしめていることでしょう。