

金山町で道行く人に「地元の名物って、何ですか?」と訊ねれば、誰もが「そりゃあ、天然鮎じゃろ!」と口をそろえます。清流・馬瀬川や益田川は、あの長良川と並んで中京地域を代表する鮎釣りのメッカとして知られ、初夏から秋まで太公望たちで賑わうそうです。
中でも馬瀬川の大物鮎は、名古屋方面だけでなく、東京の料亭なども垂涎の的にしています。そんなトレトレの鮎料理や金山の季節の味を守り続けているのが、高木酒造のお隣さんである「魚忠」です。
「高木酒造さんとは、祖父の頃からの御縁です。その頃、私の祖父はこの界隈の仕出し料理人でした。慶事や法要の折に、御宅に出向いて料理を作っていました。昭和26年(1951)頃から父が本格的に仕出屋として店を構え、今はそれとともに、地元のお客様のお集まりやご宴会もお受けしています。夏からは、やはり鮎料理がメインですね。実は、うちは釣り人からの仲買業もしているんですよ」
そう答えるのが、魚忠の三代目ご主人・杉山 和信さんです。
若い頃は岐阜の一流料理店で修行し、上質の日本料理と金山の郷土料理を工夫した魚忠のメニューが、地元のお馴染み客に人気を呼んでいます。
食材の仕入れは、杉山さん自身が毎朝岐阜の市場へ出向くこだわりよう。料理にできるだけ手を加えず、旬の味そのものを生かすのが魚忠流なのです。
「自然の産物が豊かな金山に生まれ育ったから、本当に良い物はすぐに見抜けますよ」
そんな杉山さんは、代々、地元の鮎料理を守ってきただけに、鮎の顔を一目見れば品質を見抜ける“きき鮎”の達人でした。
地元の誰もが惚れこんでいる魚忠の味。そこには、温かな金山の心もこもっています。
ご主人を支える女将の杉山 妙子さんは、そんな接客サービスを大事にしていると語ってくれました。
「お客様とさりげない会話ができて、それでいて、心地良い距離があることですね。それぞれの方にくつろいで頂ける、ごく自然な“間を持つ”ことを心がけています。例えば、金山には“まめなかねえ”って挨拶があるんです。こんにちは!お元気ですか!と言う意味の方言ですが、常連さんがいらした時などは、そんな挨拶を気兼ねなく交わします。お客様ごとに、金山の心がある御もてなしをすることで、金山の味もいっそう美味しくなると思うのです」
そこには、ご夫婦で大切にしている“金山の素朴な人情”が隠し味になっているようです。御膳に敷かれた手書きの紙絵にも、そんな心がにじみ出ていました。
もちろん、旅のお客様や高木酒造を訪れた方々も大歓迎!
銘酒・奥飛騨と魚忠の料理が、きっとあなたを金山のとりこにすることでしょう。