TOP > 蔵元紀行 > 北の誉酒造 > 水・技・米の紹介

会員サイト

入会特典

・「いい酒のめーる」の購読
・利き酒会やイベントへのご案内
・検定やサイト機能の利用
・マナベル度の獲得

会員登録

すでに会員の方はこちら

ログイン

蔵元紀行

北海道

東北

関東・甲信越

中部・北陸

近畿

中国

四国

九州

イベント情報

  • 利き酒会について

地酒の用語集

あなたの地酒の知識を増やしましょう

  • 地酒用語集

北の誉酒造株式会社~水・米・技の紹介

「昭和28年(1953)の小樽生まれ、そして小樽育ちです。ですから、物心ついた頃には“北の誉”の看板を目にしてました。大人になったら、この酒を飲むことは当然の気持ちでしたね。でも、気がつけば、作る立場になっています(笑)」
生粋の小樽人らしく、大らかで素朴な笑顔を見せてくれるのが、北の誉酒造の常務取締役・有山 幸男(ありやま ゆきお)生産部長です。
出発点は、合同酒精株式会社の旭川工場。北海道大学で農芸化学(微生物学など)を専攻し、酒造りの世界を選びました。

17年間を旭川に勤務した後、東京本社・工場、全国各地の支社・工場へ転戦し、新製品開発にも携わるなど、製造現場の第一線に立つリーダーとして経験を積み、2006年より北の誉酒造株式会社へ出向、その後、常務取締役に就任しました。
「酒造り三十年、めぐりめぐって北海道に戻って来ました。今になってみて、故郷で酒を造れることが、嬉しく感じますね」
そんな喜びを抱きながらの北の誉の酒造りについて、有山常務にインタビューしてみましょう。

「北の誉の酒は、これまで南部杜氏の名人と呼ばれた佐々木 康夫氏が醸してきました。その麗しく、瑞々しい味わいは、これからも当社の基本として継守していきますが、やや旨みや味ののった酒質へシフトしたいと思います。小樽市の天狗山からの伏流水で仕込んでいる北の誉は穏やかに発酵した淡麗な酒ですが、現在の清酒消費の動向には、旨みを楽しむ食中向きの酒を意識しますね」
有山常務は、ここ数年の嗜好変化や業界の傾向から、そう考えています。
旨みを追求するには、これまで以上にきめ細やかで丁寧な麹やモロミの管理が課題になります。そのために、酒米の段階からつぶさに特性を分析して、仕込み方を検討・調整しなければいけないと有山常務は指摘します。

「例えば当社は、山田錦や美山錦などの吟醸向けの主な酒造好適米よりも、一般的な酒米の使用量が多いのです。これらは飯米に近くもあるので、精米や麹造りには、吟醸造りと異なる方法やこだわりが必要になります。そして、道産米もようやく2割ほどに達しましたが、こちらもまだまだ、その品質や特性の分析をしなければなりません。吟風などは、吸水時間がやや長くかかります。また、現状の仕込み方だと秋上がりしにくいと感じられます。このような点を解明し、味わいを確かなものにしなければいけませんね。次々に生まれる酒米をどう使用すれば最良の味を引き出すことができるのか、これは酒造りの永遠のテーマと言っても、過言ではないでしょう」
今少し、北海道産の酒造好適米は、その個性と特長の研究に時間が必要だと有山常務は語ります。

有山常務が考えている北の誉の酒造りには、抜本的な意識改革が感じられます。
メーカーであるならば、常に新しい製品開発や技術革新を推進する義務があるという哲学です。
「どこの酒蔵も、原料米や酵母、仕込む水、製造設備を、おいそれと変えることはできません。しかし、そこに落とし穴と言いますか、マンネリや慣れが生まれてきます。日々繰り返す仕事の中に疑問や試みを持たなければ、現代のメーカーは存続できないでしょう。いわゆる“柔らか頭”を、社員が持てることですね」
平成10年(1998)有山常務は、合同酒精の“大雪の蔵”を旭川で立ち上げたプロジェクトリーダーでした。その際、北海道の伝統である淡麗辛口の酒をさらに軽快でキレの良い品質に改良したのです。

しかし今、新しい波がまた起こりつつあると感じ、旨い味の酒を意識する。そんな機を見るに敏なセンスが、酒造メーカーの製造現場には不可欠だと語ります。
「それでも、商品は昔以上に短命ですよね。ましてや、これほどアルコール市場が飽和しますと、期待倒れや失敗作の確立は高いわけで、現場とセールスのコンセンサスやコミュニケーションが欠かせません。セールスニーズに応え過ぎた結果 、商品アイテムが激増し、現場へのしわ寄せとなってしまうケースも、これまでの清酒蔵元にはありがちでした。それを整理し、効率化することは、製造現場の大きな責任だと思います」

平成18酒造年度、北の誉は全国新酒鑑評会において、みごとに金賞を受賞しました。
その美酒は有山常務が指揮し、造り上げたものです。
「金賞を獲得したから、当社の酒がすべて好まれるわけではありません。むしろ、北の誉の伝統と技術を消費者に認めて頂ければ、それでいいのです。私としてはそのスキルを生かして、大吟醸、吟醸、本醸造など種類をさまざまに造りながら、旧来の味より繊細な旨さを醸した商品を造っていきたいですね。特に、普通酒ランクへこだわりたいのが、目下の自分のテーマなんですよ」
有山常務への最後の問いを投げる前に、求めていた答えが返されました。

吟醸酒の品質は、どちらの蔵元でも今やハイレベル。しかし、実際に消費されている日本酒の全体シェアを見れば、70%近くが普通酒である。だから、誰もが気軽に、美味しく飲める普通酒に取り組むことが、清酒業界全体の早急な課題じゃないだろうかと有山常務は提言します。
「本音は、山田錦の大吟醸よりも、普通酒の全国鑑評会があったらおもしろい。つまり、日本一美味しい普通酒を造ることが、私の夢なのです(笑)。それを、まず北海道の人に、そして小樽市民の方々に楽しんで頂ければ本望ですよ」
しみじみと、味わいながら飲める酒が好きだと語る有山常務。その盃に、日本一の普通酒がなみなみと注がれる日を、心待ちにしましょう。