

伏見の交通は、京阪電車・中書島(ちゅうしょじま)が中心。現代的な駅前をそぞろ歩けば、ふっと懐かしい風情を漂わす店先が……その「くれたけ庵」と染められた暖簾の前には御影の石畳。脇には格子窓がしつらえてあり、今にも三味線の音色が聞こえてきそうです。
「創業は120年ぐらい前で、伏見でも名の知れた旅館として営んできました。昭和58年(1983)に、料亭として生まれ変わっています。京都では消防法などいろいろ規制がありまして、町屋風の木造旅館の改修は難しく、料理屋として再出発したのです。ですから、昔のままの伏見の情緒や味わいを基調にしています」
そう語るのは、くれたけ庵の代表である浅田 次郎(あさだ じろう)さん。浅田さんはこの料亭の板長でもあり、京料理一筋に歩んできた人物です。そのおだやかな口調と繊細な雰囲気は、京料理を創るにふさわしい印象です。
くれたけ庵の魅力は、天然の食材と伏見の名水を使うことにあります。新鮮な魚介類は当然ながら、浅田さんは有機栽培の京野菜にことのほか思い入れが強く、また、玉子や調味塩、醤油、砂糖なども自然素材を厳選しています。
「現代は食材、調味料とも豊かですけど、実は体に良くない素材も多くなりました。外国から輸入されている野菜などは、特に顕著です。その布石はかなり前からあったと思います。と言うのも、10年前ぐらいに、子どもたちの間でアトピーが増えましたよね。料理人として、とても気になったのです。口から入るものを扱う以上、料理の味・質にこだわる前に、自然の素材を使うことは根本的なルールであると思うのです。そこで、この庵のオーナーや女将さんと相談し、徹底して材料にこだわることにしました」
なるほど、板場に立つ浅田さんの手元には、さまざまな天然物が集まっていました。また、お昼のメニュー「龍馬の旅弁当」などにも、とことん材料を吟味しています。
ちなみに、くれたけ庵のメニューには松本酒造の「自然米仕込みの酒」がとても合っていて、女性たちに人気が高いそうです。エビ芋、九条ネギなど、伝統の京野菜料理は、訪れるゲストをほっこりと温めてくれそう。
2月には「節分の特別メニュー」も用意されるとのこと。大吟醸のシーズン、ぜひ松本酒造の銘酒とくれたけ庵のご馳走で、ほんまもんの京の味覚をお楽しみあれ。



※ なお、メニューは、月々の旬や節句に合わせて変わります。