

汽笛に誘われるようにやって来た、明石の港。波止場には、昼網みのセリに使われた木箱が山と詰まれています。
潮の香りに満ちた通りを歩いて行けば、「割烹 明石屋」に辿り着きました。
江井ヶ嶋酒造の卜部 社長が「明石の魚と神鷹を存分に楽しむなら、ここしかない!」と太鼓判を押してくれた明石屋は、老舗中の老舗です。
その賛辞に答えて、ご主人の河渕 卓穂さんは「明石の魚介類には、神鷹の酒しかないですよ!」と明言。事実、明石屋には神鷹以外の酒は置いていませんが、料理と酒の相性に、ゲストからは驚嘆と感動の声が寄せられるそうです。
「明石屋は、昭和21年(1946)戦後の屋台から始まっています。私は34年前に板場へ入り、昨年まで厨房を預かっておりました。ところが、三代目オーナーが明石屋を手放すことになりまして、私に暖簾を守って欲しいと頼みに来られたのです。明石屋あっての私の人生でしたから、無くなるのは忍びなく、お引き受けしたわけです」
覚悟を決めた河渕さんは、市内2店舗と従業員28名をそっくりそのまま引き継ぎ、明石屋ファンのお客様を変わらぬ味と技で持てなしているのです。

さて、明石屋では、トレトレの朝網みと昼網みの魚介類をふんだんに使います。明石ダコ、明石鯛、アナゴ、イカナゴ、目板カレイ、赤メバルなど、鹿ノ瀬と呼ばれる漁場から揚がったばかりの魚たちは目が輝き、その身はプリプリに締まっているのです。
「栄養分の多い明石海峡では、貝類もたくさん獲れます。それを狙ってタコが集まるんですよ。明石ダコは、雄と雌を使い分けるのがコツです。雄は食感と歯ごたえが抜群で、2キロから3キロの物を刺身で召し上がって頂きます。雌は身が柔らかいので、しゃぶしゃぶや煮物に使います」
まさに河渕さんの言葉通りの料理が、筆者の前にドーンと登場! ツヤツヤしたタコの白い身と大きな吸盤、ほんのりと桜色した鯛は、天然物としては最も美味しいサイズなのだそうです。
そんな明石屋のご馳走は、最近、女性に人気とか。神鷹の冷酒や燗の酒を勧めれば「明石の美味と美酒が気軽に楽しめて、最高の贅沢ね」と、ついつい長居をしてしまうそうです。
春の週末は明石へ行って、昼網みを見学し、うおんたな商店街をブラリと散歩。そしてシメは明石屋へどうぞ! タコうない明石料理を腹いっぱい楽しみタイあなた、大満足、間違いなしですぞ。


