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株式会社三宅本店 ~水・米・技の紹介

瀬戸 富央(せと とみお)杜氏

昭和の清酒ブームの年輪を感じさせる、巨大な三宅本店の呉宝蔵。
その重厚な蔵の中で、新しい進化が遂げられていました。
「今年の秋からは、最新鋭の設備と地元の蔵人による醸造スタイルに変わります。先人の方々が築いてきた千福の歴史と伝統に、新たな時代と技術を加えていく立場に責任の重大さを自覚しています」
そこかしこに設置されていく真新しい銀色のタンクや生産ラインに声を昂ぶらせるのが、株式会社三宅本店の杜氏を担当している、瀬戸 富央(せと とみお)氏です。
現在43歳、呉生まれの呉育ちと聞いて、地元市場を大切にしている千福の酒造りを改めて実感します。
三宅本店に入社して18年目の瀬戸 杜氏に蔵人を目指した理由を訊ねてみると、先達の名杜氏との出逢いがきっかけだったと答えます。

吟醸酒の香りに魅了された

「私は、高校を卒業後に研石会社で働いていたのですが、先輩に三宅本店の蔵人がいました。その方から、毎年、冬の新酒の時期になると蔵に呼ばれまして、酒を味見させて頂いたり、簡単な作業を手伝っていたのですが、土居 恒夫(どい つねお)杜氏から『お前、うちで酒を造ってみろ』と声をかけられまして、飛び込んだわけです」
 当時、いわゆる普通酒を晩酌とするのが常だった瀬戸 杜氏は、吟醸造りの千福を口にして、思わず「これ、日本酒ですか?」と口走ったそうです。
芳しい香りとふくよかな旨味に、米を原料にする酒なのに、どうしてフルーツのような香りが漂うのか。そんな衝撃的な吟醸酒に魅了されたことが、彼の人生を変えたのでした。

地元の6名体制へ

三宅本店の酒造りは、これまで12名によって司られていました。呉や安芸津の出身者だけでなく、東北の岩手県からやって来て冬に勤務する南部杜氏も含めた体制でしたが、平成25年(2013)の秋から地元出身者による酒造りに転換します。
「社員としては6名の体制になります。同時に製造設備を一新しまして、千福の新たな美味しさを追求したいと思います。しかし、当社が掲げる基本的な酒の価値は、変わりません」
瀬戸 杜氏 いわく、千福も広島の軟水醸造法を取り入れているが、この醸造法は詳らかな資料やデータが存在しておらず、あくまで経験と実績の積み重ね、その伝承によって守られてきたそうです。

タンクで、ひと夏熟した酒
「軟水醸造法によって醸される旨味が広島の酒の特長ですが、それは新酒の時から生まれるのではなく、ひと夏、しっかりとタンクの中で熟成していくことで仕上がります。つまり、秋上がする酒こそが広島酒だと、私は自負しています。当社では、この広島酒造りを実践的にセオリー化して、社員の誰もが理解できるようにしています。そこから生まれた酒造りのモットーが『表情 いろいろ 千福』です」
根本は旨い酒造りだが、お客様に好まれるいろいろな製品にアレンジしていくのは、次の世代の蔵人たちの使命である。それは恩師である土居 杜氏からの教えだったと、瀬戸 杜氏は懐かしむような笑みを覗かせました。

灰ヶ峰からの伏流水

さて、三宅本店の米や水について、瀬戸 杜氏から紹介してもらいましょう。
「当然ですが、広島の米を中心に使っています。特定名称酒については、八反錦、千本錦などですね。そして普通酒にも、もちろん地元の酒米を使用します」
とりわけ、瀬戸 杜氏がこだわるのは八反錦です。広島を代表する酒造好適米の一つですが、実は吟醸酒の麹造りに難しい面もあると言います。
「心白は大きく、旨味をたっぷりと含んでいますので、まさに濃醇な旨口酒には最適ですが、いかんせん精米で砕けやすいのです。60%までの精米に適していますから、純米酒に使うのがベストかも知れませんね」

限定給水する、瀬戸 杜氏

秋上がりする熟成した酒、そしてお燗をして旨くなる酒が好きな瀬戸 杜氏でもありますから、八反錦の酒は自分好みでもあるのでしょう。
蒸し米からモロミ造りまで、仕込み水は三宅本店の敷地内にある3本の井戸から汲み上げています。この水も、瀬戸 杜氏がこだわる中軟水です。
「呉の町を見下ろす灰ケ峰の伏流水です。これが地下水脈となって、当社の直下を流れています。硬度で言いますと50~60ぐらいですね」
三宅本店では、米を蒸す水からモロミ造り、さらには瓶詰め工程での洗浄など、すべてをこの清冽な地下水でまかなっています。

中軟水で蒸した麹米

軟水であるがゆえのポイントは、麹やモロミの発酵段階での温度変化に惑わされず、ゆっくりじっくりと変化していく酒の面(つら)をしっかり観ていくことだと瀬戸 杜氏は言います。
「特に限定給水による特定名称酒の麹造りは、先代の土井杜氏は立場を退いても、ご自身の眼と手と口で確かめなければ承知しません。その教えを、今もきちんと引き継いでいます」
さまざまな工程上の課題の中でも、麹米をタンクに投じ、中軟水を加え、酒の命が吹き込まれる“踊り”に細心の注意を払うことが瀬戸 杜氏の最大ポイントだそうです。

生もと造りに挑戦

ここで、時間と手間隙をかけている「神力 純米無濾過原酒 生もと造り」について、解説して頂きます。
「速醸酵母と勝手のちがう自然の酵母と乳酸の発酵力を使う生もと造り、山廃仕込みは、限られた条件の中で、本来の酒の味わいや品質を極めるわけですから、相当難しいなと覚悟していました。それに私、やったことがなかったので、知らないものは強い! の精神でチャレンジしました(笑)」
普段の酒造りと同じ工程、設備環境の中で、いかに差別化する生もと造りをするのか。それは、瀬戸 杜氏は温度管理の重要視だったと述べます。

じっくりと品温チェック

「例えば、東北地方とちがって、呉など瀬戸内海沿いの地域は気候が温暖ですから、冬でも暖かい海風が吹いてきます。これが蔵に及ぼす影響は結構あって、入念な温度管理こそ私が生もと造りを手がけてきた3年間の必須条件でした。当初は手探りの状況でしたが、あれこれと先輩や友人の蔵人に訊きながら、ようやくお客様からの手応えを感じています」
また、生もと造りのお陰でもあるが、最近は特にグルコースの甘味を製品開発の指標としてもチェックしているそうです。

酒造りのセオリー化

それでは締めくくりに、瀬戸 杜氏がこれから目指す三宅本店の酒造りについて抱負を披露して頂きましょう。
「酒造りそのものだけでなく、若手の育成についても抱負の一つです。私が入社してしばらくは、季節の杜氏や蔵人中心の職人組織でしたが、今では社員制度の下で誰もが同じ理論や技術、意識を共有できるようになりました。次は、これを新しい世代に蓄積し、資産として残していくシステム作りが課題になります」
そのためには、現場だけでなく日本酒市場をくまなく知り、学ぶ時間も作りたいと言います。

差別化する新商品の開発を

「最近のお客様の嗜好は、確かに、甘口を求めています。もっと言いますと、商品や味のニーズは年年歳歳変わることが多く、スピードも速いですね。そんな多様性に杜氏として対応せねばならない時代ですが、楽しさ、おもしろさでもあります」
最近は低アルコール商品、スパークリングタイプの商品など、女性の嗜好性を意識したテスト商品も企画開発している瀬戸 杜氏。そのアイデアとチャレンジに、千福の新たな飛躍を期待しましょう。