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「山廃」とは、酒母製造方法の一つ。日本酒造りでは酵母を増殖させる過程(酒母)で「速醸系」と「生もと系」に分かれますが、「山廃」は「生もと系」に入ります。「生もと系」は、自然の力で酵母を育てる製法。麹、蒸し米、水を櫂棒で摺りつぶす「山卸」という作業をしていましたが、それを廃止した作り方なので「山廃」と呼ばれます。力強く、重厚で骨太な味わいが特徴。温めることにより旨味成分が増すので、燗酒に良く合います。
今回の地酒は「山廃」、いつもの様にイチノイチノイチの料理長建守さんの料理とお酒のこだわりを紹介します。
山廃仕込みの日本酒は、通好みのお酒。伝統的な製法で時間と手間をかけた頑固なお酒とも言えるでしょう。当然のことながら高い技術が必要で、味の全ては作り手の腕にかかってくるのだから、蔵人の気合も熱意も半端なものではありません。「私たちはそんな手造りのお酒に敬意を表しつつ、でも肩の力を抜いて楽しみたいものですね。山廃はしっかりとした味わいで燗につけると味と香りがさらによくなるものが多いようです」と料理長の建守さん。コクのある濃い味わいが特徴なので、クイクイ飲むというよりは、体をじんわりと温めながら時間をゆっくりかけて飲むのがおすすめだとか。この山廃に合わせるものとして紹介していただいたのが、鍋料理と珍味。「どちらも日本酒を飲むペースに合わせてゆっくりと楽しめる料理。気心知れた仲間との会話を楽しみながら味わってほしいですね」と建守さん。まだまだ続く寒い夜に、あつあつの鍋やとっておきの珍味を囲んでみてはいかが。

やっぱり冬は鍋。しかもこの豆乳鍋は、脂の融点が低くてうまみがある、千葉県産のまほろば豚を使用。なんとここだけでしか食べることができない豚肉というから驚きです。たれはさっぱりとしたオレンジポン酢と濃厚な辛みごまだれの二種。野菜とともに食した後は、味噌バターだれにつけていただくうどんで締め。と思いきや、本当の締めはこの後。うまみが出た豆乳ににがりを加えて豆腐にしてしまうのです。ぬる燗がついつい進みます。

お猪口を片手にチビチビと日本酒を楽しみたい。そんなときにおすすめの珍味を盛り合わせた欲張りな一皿がこれ。するめいかの塩辛ゆず風味、鯛の子の塩辛うずらのっけ、生からすみ。塩加減といい、独特の旨みといい、日本酒好きにはたまりません。これをのせるのは、カリッと焼いたバタートースト。一見するとミスマッチのようですが、食べて納得。まろやかなコクが加わって、これが山廃仕込みの日本酒と抜群に合うのです。

東京、オランダのホテルオークラなどでシェフを経験し、和食にたずさわること13年。日本酒とともに歩んできた建守さんはこう言います。「地酒を語るには、やはりその土地の郷土料理は欠かせません。ここ日本橋はその昔、全国の食材が集まってきた場所。各地で愛されるおいしい酒と食を、もう一度ここから発信していきたい。そして、地酒と郷土料理を味わいながら、日本中をまるで旅する気分で楽しんでもらえるとうれしいです」。
江戸時代、旅のはじまりとなったこの地は、400年の時を経たいま、美食の発信地としてにぎわいを見せています。
※歳時記で紹介している"肴"と"地酒"は期間中のみニホンバシイチノイチノイチで味わえます。