TOP > 歳時記(第13回)
一般的にお酒は「もろみ」を搾った後に水を加えてアルコール度を調整します。しかし原酒の場合は、その加水調整を行いません。ですから、原酒の場合はアルコール度が他と比べて高めなのが特徴です。原酒は濃醇な味わいで、日本酒本来の旨みが楽しめるといえますね。また、夏の風物詩である鰻の蒲焼や煮穴子などとも相性がよく、氷などを使ってオンザロックで飲む原酒も美味しいものです。暑い夏などにおすすめの飲み方のひとつですね。
日本酒の原点ともいうべき味を感じることができるのが、原酒。米と米麹を発酵させた「もろみ」を搾った、そのままのものです。通常は製品化するまでのプロセスの中で、水を加えてアルコール度数が16~17度になるように調整しますが、原酒は水を一切加えません。そのため、アルコール度数が18~20度くらいと高く、それが通好みの酒と言われるゆえんです。
「味わいが濃く、刺激的でありつつも、まろやかさがあるのが特徴ですね」と料理長の倉田さん。このお酒に合う料理ということで提案していただいたのが、旬の魚を使った料理3品です。「この時期に味がいい魚といえば、めじまぐろ、うなぎ、はも。素材自体のうまみを生かすため、極力シンプルに調理しました。どれも脂がのっているので、コクのある原酒に負けないと思いますよ」。
原酒はロックやソーダ割りといった飲み方をしても大丈夫。味がくずれることはありません。夏だからこそ、そんな新しい飲み方を試してみてはいかが?
本まぐろにはないさっぱりとした味わいが特徴のめじまぐろ。夏場に食べるまぐろとして抜群の人気があります。しつこくなく、それでいてうまみがあるので、まずは刺し身でそのおいしさを堪能し、原酒との相性を楽しむのがおすすめです。隣に品良く盛りつけられているのが、めじまぐろのぬた。ほんの少し辛子をきかせた酢みそであえたものです。酸味が効いているため、パワフルな原酒とのバランスがよく、ついついお酒が進みます。
夏場のスタミナ食材といえば、うなぎ。甘辛いたれを絡めた蒲焼きもおいしいのですが、原酒に合わせるならシンプルな白焼きがおすすめです。浜名湖産のうなぎの白焼きを一度蒸してから炭火で焼いているので、身はふっくらと柔らかく仕上がり、炭火の香ばしさが食欲をそそります。わさびじょうゆをつけていただけば、うなぎの濃厚な脂をさっぱりと食べることができ、骨太でしっかりとした原酒の味わいも引き立ちます。
京都の夏に、はもは欠かせない食材。脂がのった肉厚の身は、噛むほどにうまみが出て、暑さをしばし忘れさせてくれます。はもは、まずは骨切りをし、皮のぬめりをていねいに取って臭みを除きます。そして、相性がいい大葉、梅肉を塗って巻き、天麩羅衣にくぐらせてカラリと揚げれば完成です。口の中でサクッと音を立て、夏の香りがふわっと広がれば至福の喜び。キーンと冷やした京都の原酒がよく合います。
東京、オランダのホテルオークラなどでシェフを経験し、和食にたずさわること13年。日本酒とともに歩んできた建守さんはこう言います。「地酒を語るには、やはりその土地の郷土料理は欠かせません。ここ日本橋はその昔、全国の食材が集まってきた場所。各地で愛されるおいしい酒と食を、もう一度ここから発信していきたい。そして、地酒と郷土料理を味わいながら、日本中をまるで旅する気分で楽しんでもらえるとうれしいです」。
江戸時代、旅のはじまりとなったこの地は、400年の時を経たいま、美食の発信地としてにぎわいを見せています。
※歳時記で紹介している"肴"と"地酒"は期間中のみニホンバシイチノイチノイチで味わえます。