TOP > 歳時記(第33回)
「大吟醸原酒」とは、精米歩合50 %以下の米と米麹から作る、「大吟醸」であり、かつ通常は行われる加水調整をしない「原酒」というタイプになります。米の旨みが最大限に生かされ、華やかで深い味わいと香りが特徴。冷やして飲むのがベストですが、アルコール度数が少し高いので、ロックで飲むのもおすすめ。原料の酒米によって味が違うので、飲み比べるのも一興。
米のうまみと蔵人のこだわりによって作られる、純米大吟醸の原酒。磨き上げた米から作る雑味のない味わいを、ストレートに感じることができる日本酒です。加水していないためアルコール度数が高く、どっしりとした重みがありますが、口当たりがなめらかで香りも上品なので、するすると飲めてしまいます。
そんなお酒に合う料理ということで、料理長の倉田さんがおすすめするのが、旬の素材、それも鮮度抜群で確かな味わいの海の幸を使った料理です。「混じりけのない日本酒には、素材の力を最大限に生かした料理が合うと思うんですよね。今いちばんおいしいのは、わかさぎ、やりいか、地はまぐり。どれも素材そのものの味がいいので、あまり手を加えず、シンプルに調理してみました」。
蔵によって味わいが全く違うのも、この日本酒の奥深いところ。ちょっと特別感のあるお酒ですが、味わいは抜群なので、ぜひ試してみてください。
わかさぎはくせのない味わいと身の柔らかさが楽しめる、今が旬の魚です。天ぷらにしていただくのが定番ですが、ひねりをきかせて洋風にアレンジ。圧力鍋で骨まで柔らかくしたわかさぎを、にんにく、タイム、ローズマリーなどを入れたオリーブオイルに一晩漬け込みます。ポイントはここに実山椒を入れること。和の香りを加えることで、日本酒との相性がぐんとよくなります。フレッシュな香りの純米大吟醸と合わせれば、箸が止まらなくなりそうです。
春に多く水揚げされるやりいか。鮮度抜群のものは、透明感があり、身が引き締まっています。おいしさをそのまま味わうなら、やはりお造りが最高でしょう。つやのある身を口に入れると甘さがふわっと広がって、なんとも贅沢な気分になります。えんぺら、胴、げそ、それぞれ味わいと食感が違うので、ぜひ食べ比べてください。どっしりとしたボディがありながらも飲みやすい、純米大吟醸の原酒をゆっくりと味わいながらいただくのがおすすめです。
土鍋のふたを開けた瞬間、目に映るのは常識を超える大きさの地はまぐり。およそ10cmはある貝の大きな口の中で、ふっくらとした身が湯気を立てています。だし汁、酒とほんの少しのうす口しょうゆを土鍋の底に入れて熱し、その熱で地はまぐりを蒸していくシンプルな調理法。しかし、このシンプルさが貝のうまみを最大限に引き出すのです。辛口ですっきりとした純米大吟醸と合わせて、今だけのおいしさを味わって。最後にだし汁も忘れずにどうぞ。
東京、オランダのホテルオークラなどでシェフを経験し、和食にたずさわること13年。日本酒とともに歩んできた建守さんはこう言います。「地酒を語るには、やはりその土地の郷土料理は欠かせません。ここ日本橋はその昔、全国の食材が集まってきた場所。各地で愛されるおいしい酒と食を、もう一度ここから発信していきたい。そして、地酒と郷土料理を味わいながら、日本中をまるで旅する気分で楽しんでもらえるとうれしいです」。
江戸時代、旅のはじまりとなったこの地は、400年の時を経たいま、美食の発信地としてにぎわいを見せています。
※歳時記で紹介している"肴"と"地酒"は期間中のみニホンバシイチノイチノイチで味わえます。