飲み方と家系のDNAの関係。

解体新書 第13回

指一本酒一升とは、なんぞや?

今回は少しアングルを変えて、あなたのご家族やあなた自身の日本酒の嗜好性を考えてみましょう。ここでは、あらためてB子さんの家系図を参照してください。

家系図

たとえば、B子さんのお母さんは高知の出身ですが、土佐の高知に行きますと何しろ飲み方は豪快で、奥さん達もダンナと一緒に飲むことがあたりまえです。

箸拳を始め、お遊びもふんだんで盃を置かせぬ飲みのペースがあり、豪快と言うしかありません。

お土産も生半可じゃなく「明日の朝にウチに寄って行け。土産に猪肉を渡すから」と誘われて、竹皮で包まれた猪肉を戴くつもりで同僚と二人で行ってみると、「どっちが右足か左足か分からなくなった」と言う始末。三歳児一人分ほどの大きさの猪の片足をそれぞれに頂いて、往生したことがあります。

名物料理にしても、皿鉢などはお正月のおせち料理と同じ理屈で、奥さんが腰を据えて一緒に飲めるようなシステムとも言えます。

(おせちや皿鉢料理が、奥さんを楽にさせるシステムだとは言ってません、あしからず)

また、飲みのピッチは何しろ早く、これは風土というしかありません。

必然、お酒の好みはマッタリとした旨味の濃いお酒よりも、スッすくスイスイ飲める辛口のお酒が中心になります。

この「飲みのピッチ」と「酒の甘辛」というのはニワトリとタマゴの関係で、ピッチが早いから辛口が欲しくなるのか、旨口のお酒が好みだからユッタリと嗜む(たしなむ)ようになるのか、どちらが先か分かりませんが間違いなく相関関係にあります。

この傾向は土佐だけかと思えば、灘や伏見の大手の酒蔵の社員の飲み方(社風)にも良く表れていて、灘の酒蔵の社員の方達は飲みのペースが早く、一方、伏見の方たちはいかにも優雅に召し上がる方が多いように思えます。

では広島・西条の酒蔵の方はどうかというと、お酒の好みは甘口旨口が好みの方が多いのでピッチは然程早くありませんが、話す言葉は豪快で、かつ、いつまでも飲んでいる方を多く見かけます。

逆に北陸三県(特に富山県)などは、お酒は辛口が多いのですが、飲みのピッチは早くなく、いつまでも飲んでいるところは広島と一緒ですが、「指一本酒一升」の文化でツマミなしでいつまでも飲んでいます。

この「指一本酒一升」というのは、小皿に盛られた荒塩だけで酒を飲み、一升も飲むと荒塩を舐めていた指がふやけるので2番目の指で塩を舐め、そのうち酔っ払って自分が何升飲んだか分からなくなっても何本目の指を舐めているかで自分の飲んだ酒の量 が分かるとの旨。

すごいですね。でも荒塩ばっかりで酒のんでるのかってーと、魚も肴も美味いんだなー、北陸は。

風土と暮らしのサイクルが、地酒を収斂した。

昔、日本人は地域ごとに異なる文化を持ちましたが、翻せばその文化の繰り返しが、前述のように、その地域の人柄を形成していったとも言えます。

酒はもともと節句や慶弔の場の縁起物だったわけで、娯楽のない時代でしたから、みんなで酔うことが快楽のひとつでした。

その後、文明の進化とともに衣食住のかたちも徐々に変化し、いろいろな暮らしの楽しみ方が生まれます。しかし、地酒本来の素地は、土地土地の風土に深く濃く浸透していましたので、地域性を越え難いものでした。

輪廻といえば大袈裟ですが、そうした地域性・地域文化に伴なった人柄・地域柄がサイクルする中で、お酒の飲み方にも地域性が生まれ、またその飲み方が人柄に結びつき、時代の流れの中で好みに合った地酒に収斂 されていき、地域地方ごとの地酒が生き残ってきたわけです。

必然、生き残った地酒の味質は地域に合ったものになるのですが、その地酒のタイプの違いが再び地域柄・人柄に影響を与え、お酒の飲み方にも違いが生まれ、地域文化を形成していく。

すごいロマンだと思いませんか?

自分の食と酒のルーツを探ってみよう。

地酒そのものから見れば、一番影響を受けたものは魚であり、魚のタイプによって醤油の味質も変わり、その変化は相互関係なのですが自然と地酒のタイプの違いに結びつく。

その上で、それこそニワトリとタマゴの関係なのですが、飲みのピッチと地酒の辛口甘口旨口の好みに分かれていき、その飲みのペースが再び地域文化を構成していきます。

そうしたロマンが、最近ではとんと薄れてしまいました。 日本中全国、どこで獲れた魚でも翌日には何処でも食べることができ、かつ油モノ・揚げ物が増えてくれば飲み物はスッキリ系が多くなり、いつの間にか「美味しい」という言葉は「飲み易い」と同義になってきたのでしょう。

でもタマには「ウチの先祖って、何処の出身だったんだろー」って思いを馳せて、それこそ、あなた自身のDNAに刷り込まれた味の好みのルーツを探ってみませんか? それだけで、キット地酒のファンになりますよ!

ひと口飲んでは感じる味とロマン・・・・・・そんな地酒の楽しみに、巡り合ってください。