うまい肴が作れる!酒と味と香りのマッチングヒント。

解体新書 第22回

ちょっとの工夫で、手作り肴を作るコツ。

今年6月20日に開催された「地酒蔵元会主催 第1回手作り酒の肴コンテスト」では、長野県ご出身の和服美人、山浦千恵さんが見事グランプリを獲得されました。(実況レポートは、手造り「酒の肴」コンテストのページでお楽しみくださいね!)

その栄えあるグランプリメニューは「紫蘇とウニの和え物」。はっきり言って、市販の壜入りウニに紫蘇の葉をまぶして、みりんと出汁と酢で和えただけの、まっこと手軽なオツマミなんですが、これが何とも美味しかった。

「男の手料理」を極めた熟年男性や、手間ひま料理派の女性を差し置いて堂々トップに選ばれた理由は、このメニューが本物の手作りセンスで、しかも誰でも簡単手軽に作れることのようです。

酒の肴における「手作り」という意味には、市販のものにない凝ったこしらえと、ご家庭でもチャチャッと出来る「専門性」を必要としないメニューの2通 りの意味があると思うのですが、この山浦さんの作品は、本当に簡単お手軽に作られたわりには、見た目も味も玄人顔負けの「最高の肴」でした。

ちなみに、一緒に来られていた友人の方が、「本当に、コレでグランプリなんか取ってもいいの?」なんて驚きながら、賞品の地酒を山分けしていました。

缶詰ダシに、秘策あり!

ところで、山浦さんの「紫蘇とウニの和え物」は、ウニがベースでありながら北海道の地酒が合う雰囲気ではなかったのです。

強いて言えば富山の酒かな? などと考えながら試食しましたが、行き着くところ長野の香り高い地酒の方が合っていて、山浦さんの御出身地も長野。

さらに、隠し味がホタテって聞いて長野っぽくないなと思っていたら、ホタテの缶 詰ダシを使っているとのこと。なるほど~、ありゃ確かに、磯の香りはせんもんなぁ。

でも、これと同じ上手な隠し味の使い方がありまして、白ご飯に顆粒の「炒飯の素」なんかでカニチャーハンを作る時、最初に溶き卵の中に前日たべた蟹缶 の残り汁を加えておくと、メチャクチャ旨いカニチャーハンになるのですよ。

余談ですが、これの応用編で、小生かって友人たちを騙したことがあります。

あらかじめシイタケとオアゲをマツタケの味のお吸い物に浸したものや、蒲鉾をマツタケの形に刳り貫いていかにもマツタケ風に焦げ付けた品を、混ぜ御飯が炊き上がる寸前に吸い物のマツタケ味の顆粒といっしょに入れて、今日は贅沢なメシ食わせっからと、500円づつ巻き上げたことがあります。

さらに、キノコなどの菌糸類に地酒を合わせるには、その料理そのものの味付けもさることながら、柑橘系のエッセンスが利いているかどうかの影響が大きくなります。

ということでカボスやレモン風味などが利いているならば香り高いサッパリ系の地酒、みりん味やダシ味がベースなら重めの純米、さほど濃くない煮物などならば、飲み口はシッカリていて軽めの本醸造。

そんなイメージで合わせると、大きな狂いはないと思います。

料理のソースに合わせて、地酒を楽しむ。

先日ホテルJALシティ松山で行った「日本酒を旬の味覚で愉しむ」会でも、「甘海老の塩辛」なんて贅沢な一品が試食の段階では酢橘の上に乗っていたのですが、進行上たまたま軽目の生貯蔵酒から重目の純米へ切り替えるタイミングだったので、酢橘を横に添えるようにしてもらって、二通 りの味わいで召し上がっていただけるように御願いしました。(あの時は説明するの忘れてたけど御客さん分かってくれてたかなぁ?)

このホテルJALシティ松山での会では、「ボルチーニ茸のパルフェ」があって、これが実に地酒に合っていたり、嫁にも食わさない「秋茄子のぺペロンチーノのアンチョビ風味」など、お酒に合う素材選び・味付けの工夫が凝らされていました。

むろん、すべて美味しく楽しくもあったのですが、地酒蔵元として嬉しかったのは最後のステーキの前に「プティロブスターの西京味噌焼き」と「山芋のステーキのソース・アラビアータ」がペアで出てきたこと。

これは同じ純米吟醸酒でも重い酒と軽い酒の飲み比べができる、最高の組み合わせメニューでした。

ご家庭でいろいろな地酒を飲み比べる時、いつもと同じ魚や肉、野菜素材でも、醤油、味噌、香辛料、ソースによってお酒との相性が変わることを楽しんでみてください。

料理の香りづけも、酒を選ばせます。

香りも、酒の肴の重要なポイントですね。香草を使うような洋風料理は、特に日本酒と合う・合わないが顕著になりますが、ご家庭での手作り肴の場合も、最後の香り付けには注意したいものです。

たとえば、紫蘇は香りが高いものの、なぜかほとんどのアルコール類に合います。しかし、柑橘系の素材はビールに合っていても、地酒となると酸味がキツすぎて苦く感じたりします。

コンフィーやアクアパッツァなどの蒸し物なら、旨味系の地酒との相性としては、あまり柑橘系を利かさず、甘鯛など素材そのものの甘味旨味を楽しまれた方が良いと思います。

さらに、ソース・ドレッシング類も同様で、バルサミコなどは相手の地酒によって合う合わないが極端に分かれますし、柚子風味の醤油ならば甘目の濃い口ソースの方が酒には合うこともあります。

最後に、御家庭で残ったお酒の活用法を2つご紹介しましょう。

  1. 1. 本格的なトンカツソースを使って!

    ウスターソースなら5対1から6対1、中濃ソースなら6対1から7対1ぐらいを目安に本格味醂を足します。
    その味醂との掛け合わせに清酒を足すと、これがまた美味しくなります。

  2. 2. 筋子いくらを使って!

    筋子の場合で贅沢するなら、焼酎でサッと洗って清酒に漬けます。
    2~3分で清酒を入れ替えると和え物にしやすくなり、ラム酒を少し足すと、さらに美味しくなります。
    いくらの場合も、残った清酒を浸す程度にかけておくと、これはまた風味が増します。

ほらね! いつも見向きもしない缶詰ダシや出来合い物の煮汁・ソースを使えば、新しい手造り肴も超簡単! ぜひ、お試しあれ!