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株式会社 加越~蔵主紹介

山田 英貴(やまだひでき)社長は、昭和32年(1957)の生まれ。
歴史編で解説したようにお隣りの福井市出身、旧・帝関酒造の四代目に当たります。物心ついた頃には、酒蔵の中を走り回っていたことでしょう。
山田氏は、昭和58年(1983)25歳で株式会社加越に入社しました。京都大学農学部出身の英才、卒業後は灘のメーカで2年間修行を積んでいます。
「大学入学当時は向学心に燃えていましたから(笑)、別に酒蔵の後継ぎにこだわってはなかったのですが、いざ卒業が近づくと父親の意志もあって、やはり酒造りに入らねばという自覚が強くなりましたね」
山田社長のおだやかな表情と口調は、やはり研究肌の人物のものであり、造りの総責任者らしさを浮かべます。

現在、加越では100アイテムほどの商品をリリースしていますが、全国的に低迷している日本酒業界だけに、伸び悩むものもあるようです。
「いかに市場のニーズを早く察知するか。スピード対応が鍵を握ると思います。ひと頃の地酒ブームは二番煎じ、三番煎じでも、まだ消費者のニーズをつかめましたが、これだけ情報化し商品のあふれた市場になると、高品質で適正価格なエポックを真っ先に作り出すリーダーとならなければ、躍進はありませんね」
今や日本酒業界では、ヒット商品であっても2年を持たないと言われています。山田社長いわくは、毎年の造りに半年間かかるだけにその期間が惜しい。ましてや、酒質だけでなく、ボトル、パッケージやネーミング、ルートなど、さまざまな商品化の課題を解決するには1年以上を要するので、できる限り情報と戦略のスピード化を図ることがポイントだそうです。
そして、それらの情報を現場が一方的に受けるのではなく、膝を交えて忌憚なく検討することが大切だと語ります。

加越のモットーは「良い物をより安く提供すること。コストあっての努力と追求から、いい酒は生まれる」ということです。
「例えば、一級品の山田錦を使えば最高と謳われる酒になり、普及品の酒米を使えば、それなりの味になると一般的には思われています。しかし、それは同じ人が造るという条件でこそ言えることではないでしょうか。日本全国には何千人と言う杜氏・蔵人がいますから、それぞれの工夫と研究努力で、酒米のグレードごとに個性的な味が出せるのです。当社の主流である五百万石を使った酒であっても、けっして山田錦の酒に劣るとは言い切れません。また、“おいしい酒”と“おいしくない酒”という評価については、これまで素材やブランドばかりが先行していたと思います。今や消費者の舌は肥える段階を越えて、変化を求めています。ですから、本物志向の中でも個人の嗜好が多様化してくる今後は、もっと味わいの切り口が多彩になるでしょうね」
ますますニーズが変化する現在、酒米だけでなく、麹や酵母、そして酒質を明確にセグメントし、各グレードの中で最高の日本酒を生み出す技術と知恵が生き残りの条件だと、山田社長は熱く論じます。
率直なところ、平成時代に入るまでの加越の酒造りは、あくまで“淡麗一本槍”だったそうです。当時のユーザーに「こりゃ、水だね」と冷やかされたこともありましたが、それが今では、幅広いテイストの商品ラインナップへと変化しているのです。
「今は市場のニーズをリサーチしつつ、商品を展開しています。ですから、極端に言えば『こんなもの、ありか?』と他社で酷評されるような酒質でも、敢えて挑戦していますよ。ただ、それが大ハズレすると、私だけでなく、特に桑島部長は社員に憎まれますねぇ(笑)」
その弁を聞いて、同席している桑嶋部長に商品企画や戦略の専門家として考え方などを訊ねてみました。

「最近、酒の履歴鑑定的な戦略を立てています。酒米、精白、度数などの従来の表示内容だけでなく、酒米の生産者が誰で、その米はどんな出来栄えで、いつ収穫して、いつ精米して、いつ仕込んでなど、米の段階から酒が出来上がるまでの履歴が分かるような仕掛けを検討しています。これを思いついたのは、ワインなどに比べて、消費者に対して酒造りの情報開示が極めて少ないことに気づいたからです。実際、TV番組ではヨーロッパのボルドーやブルゴーニュなどのワインシャトー訪問があるのに、日本酒の蔵元めぐりは見かけませんよね。そんなふうに、日本酒造りのディスクローズが少ないがゆえに、CMやマスコミによる大手ブランドが焼き付けられて、地酒の良さはなかなか伝わらないのです」桑嶋部長は、人間は舌先だけで酒を感じているのではないと洞察します。

そこに隠れている技術や努力、シーンやドキュメントを感じることによって、微妙に変化する。それを良い方向に積み重ねていけば、個性的な加越ブランドを生み出せるはずと解説します。
先述の山田社長の話しにあった「五百万石であっても、山田錦を越える酒」のロジックにこの履歴鑑定戦略をからませれば、確かにその希少性・信頼性は、新たな嗜好を呼ぶことになりそうです。

締めくくりとして、今後の日本酒業界の動向と変化について、山田社長に訊ねてみました。

「ここ数年、いずこの蔵元も“日本酒の多様化”を掲げ始めました。当社でも、古酒や高酸味酒のようなバラエティー商品もリリースしました。確かに、スパークリングやボジョレーなど、ワインに比べると日本酒全体のバリエーションは巾が狭く、業界的に遅れています。この課題は今後もますます取り組まねばならないでしょうし、それだけにリスクも高くなりますね。また、焼酎ブームは一時より衰えて、徐々に日本酒に戻ると思います。今ふり返ってみて、焼酎ブームは日本酒の“淡麗辛口”の延長線上にあったと感じています。喉ごしの軽い、スッキリした味わいが当り前となり、右も左も“淡麗辛口”の日本酒ばかりになった数年前、次なる変化を求めた消費者の口は焼酎に向いたと思うのです。むろん、コストの安さもありますが、酒質から推察すれば、次に帰って来る日本酒はどちらかと言えば“濃醇うま口”タイプであろう予想しています」 いわゆる、味のある日本酒が次なるトレンドになると考えている山田社長は、“若い人たちの日本酒離れ”についての取り組みも呈してくれました。
「当社は若い社員たちが中心になっていますが、プロとして日本酒にマッチする食についても探求しています。むしろ我々のようにミドルエイジの者よりも、しっかりと新たなグルメをリサーチしていますね。次代のユーザーへの日本酒の切り口は、私たち経営者が加越のコンセプトとポリシーを示しながら、彼らに存分にチャレンジしてもらいたいですね」
時代とともに、いかようにも変幻自在となることで生き抜いてきた蔵元 加越。
酒蔵はともすれば伝統と格式が先行しがちですが、加越の魅力はそんなイメージを革新する、現代的でフレキシブルな酒造りにあると筆者は思います。