蔵主紹介

桃川株式会社

日本でも、世界でも、「いい酒は朝が知っている」をキャッチフレーズに。

日本でも、世界でも、「いい酒は朝が知っている」をキャッチフレーズに。

青森県トップの座を守り続けている桃川株式会社は、現在約6000石です。北海道、東京、大阪と全国の主要な市場を獲得する一方、屋台骨である青森では日本酒製造量の30%を占めています。当然ながら、県外はブランドロイヤリティを高める特定名称酒の比率が高く、県内では桃川の盤石な市場を支えてきたレギュラー酒が主役。この両輪をハンドリングしながら、桃川の伝統を革新させているのが、上田友司(うえだ ゆうじ)代表取締役社長です。

「現在、当社は青森県市場40%、東京市場が30%、その他で30%の構成です。地元でも特定名称酒の比率は徐々にアップしています」

青森県の清酒需要は、上質で値頃感のあるコストパフォーマンスの高い商品を求められるのが、県内の流通事情。加えて、乱立してきた近隣県の新しい地酒銘柄への対策も打たねばならない状況に、上田社長の施策を訊ねてみました。

上田友司 代表取締役社長
長期低温発酵に適した蔵環境
国内外の各種鑑評会で金賞受賞

「昨今の流行と申しますか、香りが極めて高くて甘口な吟醸酒は、もちろん意識しなければなりません。しかし、基本は青森の地産地消にこだわる酒造りです。その立ち位置を変えず、消費人口の変化に即したマーケティング戦略を打ち出していくことですね。とりわけ、近年は青森県産の酒造好適米にこだわった酒造りを推進しています」

詳しく聞くと、この平成31年には、新しく青森県が開発した酒造好適米「吟烏帽子(ぎんえぼし)」を使用する吟醸造りが始まるそうです。吟烏帽子は心白率も高く、現在県内で主力の華想いに負けづ劣らず、純米酒から大吟醸酒まで幅広く適応できると評価しています。これをワイン酵母によって発酵させ、純米大吟醸を仕込むと聞けば、筆者ならずとも垂涎してしまうはず。いやがおうにも、期待が高まります。

青森県産の酒造好適米にこだわる
ワイン酵母仕込み大吟醸純米酒

「市場戦略として、県外の主要な都市圏については未開拓エリアが多く、まだまだチャンスがあると読んでいます。販路拡大と商品開発の、バランスの取れた攻めが必要だと思います。例えば、関西圏のデパートでの試飲販売イベントでは、十数社の蔵元が居並ぶ中、必ず、旨口の桃川は上位3傑の中に食い込んでいます。その答えには、お客様から“しっかりと旨い酒だ、味がのってるね”とお褒めの言葉があり、まずは桃川らしい美味しさを知ってもらおうじゃないかと、チャレンジャーの気持ちで臨んでいます」

上田社長のコメント通り、確かに、関西在住の筆者にすれば、酒販店や料理店における青森県の銘酒率は低く、桃川の銘柄を目にする機会は多くありません。しかし、今回の取材で試飲した桃川の美味しさは、食い道楽な大阪人にも大歓迎されるにちがいありません。青森県の人口は今後さらに減少すると実感している上田社長にとって、舌の肥えた上方のグルメ市場は、逃してはならないターゲットでしょう。そして、SAKEブームを迎えている海外へも銘酒・桃川は進出しています。

「今はアメリカを筆頭に13ヵ国に輸出していますが、最近はアジアのマーケットも増えてきました。数量的には製造量の7%ですが、もちろん、今後も伸びていくと考え、販売チャネルを開発しています」

上品な香り、ほどよい旨味、そしてスムーズな飲み口は海外の各種鑑評会でも受賞し、受け入れられていると、上田社長は胸を張ります。

海外でも受賞し、評価は高い
オール青森に拘って開発したリキュール「雪りんご」

最後に、歴史背景の章で前述した「いい酒は朝が知っている」の格言を解説してもらいましょう。

「このキャッチコピーは、長年、青森県内のテレビコマーシャルで流れ、お客様の耳に焼き付いているのです。現在も販売イベントで、私は消費者の皆様から“おっ! いい酒は朝が知っている”と声をかけて頂き、このフレーズがあったればこそ、桃川は愛されてきたと自負しています。高尚な意味としては、上質な酒で心地よい夜を過ごせば、幸せな朝を迎えられる。でも、単刀直入にいえば、いい酒を飲めば、翌朝は二日酔いしないことですね」

なるほど、銘酒・桃川の親しみやすい旨さのように、誰にも覚えてもらえる、最高のメッセージ。これまでも、これからも、変わることなく、すべての飲み手にとって美酒であり続ける約束を感じつつ、国内だけでなく、世界の日本酒ファンに「いい酒は朝が知っている」と口にしてもらえる日を期待して、上田社長のインタビューを終えることとしましょう。

誰もが覚えている「いい酒は朝が知っている」
幸せを約束する、桃川の美酒