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奥の松酒造株式会社 ~蔵主紹介

中庸に本当の美味しさを求める、直球勝負の奥の松!

遊佐 丈二 代表取締役

プレミアムな全国新酒鑑評会 金賞受賞の「大吟醸雫酒 十八代伊兵衛」から、コストパーフォーマンの高さで宅飲み人気の「あだたら吟醸」まで、奥の松酒造の銘酒は、気品ある美味しさとともに特筆的な風味でユーザーを魅了しています。
そこには、磨き上げた米の旨味とともに、酵母が生み出す独自の味わいを筆者は感じます。
「そうおっしゃって下さるのは嬉しいですが、私からすれば、“ごく普通に、美味しい酒”を丁寧に造っているだけ。ただ当社では、いわゆる協会酵母だけでなく、独自に純粋培養した酵母を商品開発に応じて使い分けています。私が奥の松酒造へ入社して以来、現場の蔵人たちと開発してきた酵母は、すでに数十種類ありますよ」
蔵元19代目の遊佐 丈二 代表取締役は、自信に満ちた表情で答えます。

数々の受賞酒も、遊佐社長が自ら吟味

というのも、遊佐 社長は経営トップであるとともに、醸造部門の統括役も兼ね、白衣が似合う研究者然とした容貌。大学では経営学やマーケティングを習得し、卒業後は家業を継ぐために東京国税局・滝野川醸造試験場に学び、他の蔵元の門を叩いて酒造りを修行しました。
今も、酒鑑評会出品酒を始め、自ら現場に参画して吟味を重ねています。
いわば製販の両軸をリードする、多能な蔵元。奥の松酒造の中興の祖であった父・遊佐 栄一 氏の血脈を実感します。

奥の松酒造の生産量は年間6000石、年商では10億円を維持し、売り場や販売チャネルも多彩に保持しています。また、奥の松ブランドは吟醸造りの品質のみならず、ユニークなボトルやパッケージもユーザーに支持を得ています。
しかしながら、若者の少子化や年々減りゆくヘビーユーザーなど、如実な問題が目前に迫っているのも事実。そこに、東日本大震災後の風評も少なからず影響を及ぼしています。
この難題に対して、遊佐社長はどのような戦略を展開しているのかを訊ねてみました。

遊佐 丈二 代表取締役
「少子高齢化による市場変化は、アルコール商品に限らず、やむを得ない現象です。ただ、手をこまねいていても仕方がない。当社には、まだまだ取り組むべき、未開拓の市場があります。例えば沖縄や中四国、九州など、関東以北をメインにしている我々は宝の在りかを探し切れていません。広いエリアで未知の市場をくまなく探る戦略を、今後は展開していきます」
その秘訣として、奥の松を含めて福島県の日本酒は多彩であると遊佐社長は語ります。
地域的に“淡麗辛口”や“濃醇旨口”と画一されてなく、例えば、会津と二本松でも味わいは異なる。そんな独自性が、まだ奥の松に出逢っていないお客様への切り口になるとも言います。
ブランド戦略に長けている、機を見るに敏な戦略が着々と進んでいるようです。

品質を求める、現場主義の蔵元

一方、海外へ向けた展開も奥の松酒造は活発です。
現在の輸出は13か国ほどに及び、欧米、アジア、オーストラリアやニュージーランドの市場にも取り組んでいます。主要はアメリカ市場で、年商の5%前後に成長しました。
「輸出のオファーは中近東のドバイやアジアのベトナムなど、これからも増えるでしょう。特にアメリカは重要な市場です。当社へお見えになったバイヤー、個人的に交流のある現地の方々は、日本人よりも詳しい人が増えてきましたね。この八千代蔵にいらした外国の方々と交流することも、当社の若い蔵人たちに刺激と自信を与えています」
海外向けといえども、酒質や味わいに臆することはなく、今のままの品質と味わいで今後も十分通用すると遊佐社長は胸を張ります。
それは、経営トップとなってからも社長自身が足しげく現場へ通い、“ごく普通に、美味しい酒”を継続しているからにちがいないでしょう。
これまでも、これからも、品質を求める現場主義が遊佐社長の原点のようです。

特注の洗米器

実は、あだたらの森に佇む八千代蔵を取材する中、筆者は遊佐社長の技術者としての片鱗を垣間見ることができました。
奥の松の全国新酒鑑評会 金賞酒は、通常の大型システムで醸造している。そう豪語した通り、蔵には自動制御の洗米器や浸漬タンク、連続式蒸米機、巨大なモロミタンクが聳えていました。
しかし、いくつかの設備には遊佐社長が現場と練り上げた秘策を加えていたのです。
「洗米機や浸漬タンクは、メーカに特注して改良しました。混気水流によって精米後のヌカが丁寧に取り除かれ、しかも米粒は砕けることもなく最高の状態となります。これを手仕事に優るとも劣らないサナ式浸漬タンクで、限定吸水します」

改良型の連続式蒸米機

熱のこもった説明はさらに続き、連続式蒸米機は蒸気窯を改良して業者を泣かせたと言います。高品質を求めるがゆえの創意工夫を、肝胆相照らす現場の長・殿川 慶一杜氏と遂行してきたそうです。

小容量の商品開発も重要

さて、奥の松酒造では果実系のリキュール開発や、高品質でリーズナブルな小容量の吟醸酒も登場するなど、商品開発の枚挙にいとまがありません。特に、小容量の720mlや500mlを中心とした商品は、今後の消費者の世代交代に置いて重要なポイントになると遊佐社長は指摘します。
近々には、新しい純米酒を開発するとのこと。その特徴を訊いてみれば
「純米酒らしい旨味を押し出した、キレ控え目の食中酒です。シャープな吟醸味を得意とする当社としては、柔らかい口当たりの新しいタイプですね」
と、遊佐社長はトライアルな商品と答えます。

火入れと貯蔵によって味わいを醸し出す

また、奥の松の酒は、火入れと貯蔵によって味わいを醸し出すのが基本。最近市場に増えている無濾過生原酒は、福島の蔵元に少ないとも言います。
「今は、私どものような中堅蔵元、そして小規模な蔵元、さらには大手メーカーと市場がセグメントされ、極端な個性やニッチ嗜好で攻める蔵元さんもいらっしゃる。ですが、巷で流行しているブームに左右されず、当社はあくまで本来の直球勝負!」
なるほど! 王道をいく新商品の登場にも期待がふくらみます。

中庸かつ上質な、奥の松であり続ける。

締め括りに、遊佐社長自身のテーマを訊ねると、中庸であることの難しさを語ってくれました。
「極端な商品価値に走る酒は、長くは継続しないでしょう。かといって、低価格だけでもダメですね。お客様の分け隔てなく納得がいく美味しさで、コストパフォーマンスもいい。そんなポジションを獲得していく中庸戦略が、私のテーマです」
いわば、鳥の目と蟻の目を駆使するマーケティングで、みちのくの雄・奥の松の吟醸造りは新たなエリアで戦略を展開する。
そんな手ごたえを実感した、インタビューでした。