蔵主紹介

銀盤酒造株式会社

愛と行動から始まる、黒部の銀盤 第2章

愛と行動から始まる、黒部の銀盤 第2章

復活を賭けて、勇気ある英断を下した銀盤酒造株式会社。従業員30名、7000石の酒造メーカーとして新たな船出の舵を取るのが、檜垣 周作(ひがき しゅうさく)代表取締役社長です。

弱冠43歳の檜垣社長ですが、すでに飲食業界では知る人ぞ知るサクセスストーリーの持ち主です。兵庫県出身、日本酒の銘醸地・神戸市東灘区にある名門大学を平成10年(1998)に卒業後、国内トップシェアを誇る大手ビール会社へ就職。しかし、わずか3年の営業経験で、突如、ベンチャーの道へ打って出ます。平成14年(2001)に酒類と食品の流通会社を起業すると、マーケティングスキルとプロデュース力を発揮し、外食産業にも進出。檜垣社長が全国展開した焼肉チェーン店の躍進により、時の人として脚光を浴びました。その後も、飲食業界のM&A等、幅広いビジネスを手掛け、現在は、数多くの酒蔵を傘下に置くジャパン・フード&リカー・アライアンス(JFLA)株式会社の代表取締役です。

今回は、その檜垣社長から全幅の信頼を与る松岡 寛(まつおか ひろし)取締役営業部長がインタヴューに答えます。まずは、現在の銀盤酒造の姿を解説してもらいましょう。

「製造量のスリム化を図り7000石に抑えて、販売の割合は地元65%、県外35%となっています。富山県内はコストパフォーマンスの高いパック酒が主流、中でも60%精米の銀盤サケパックや、純米酒、特別純米酒の紙パック商品で灘・伏見の大手メーカーを含む他社商品との差別化を進めています。一方で、県外出荷は特定名称酒が占め、いわゆる吟醸派のオールドユーザーや若い新規顧客の獲得を目指しています」

とりわけ、東京市場には長年の銀盤ファンが多く、山田錦や雄町といった酒造好適米別の“播州シリーズ”が売り上げを牽引しています。2020年に迫った東京オリンピックでの好景気、インバウンド効果に期待して、首都圏への営業攻勢を強めていると松岡営業部長の言葉には力がこもります。

檜垣 周作 代表取締役社長
檜垣 周作 代表取締役社長
地元出荷が全体量の65%
地元出荷が全体量の65%
人気の銀盤 紙パック商品
人気の銀盤 紙パック商品

まずは、地元・富山に愛される銀盤の地位を再構築することが先決と松岡営業部長は語ります。

「富山県民は飲酒量が多いので、リーズナブルかつ高品質な酒が求められます。“銀盤 蘭パック 2000ml”は売り上げ全体の4割を占める主力商品で、冷やから燗まで楽しめる晩酌向けに好調を維持しています。富山県の愛飲家はパック酒を冷蔵庫に並べるのが一般的で、ワインや焼酎のつけ入る隙はありません。スーパーマーケットの販促キャンペーンでも、圧倒的に清酒へ注力しており、特設コーナーへ銀盤商品を積み上げて頂ける店舗が多いのです」

そのレギュラー酒のパック商品と並行する特定名称酒のパック酒も、地元市場向けの限定品です。また、料飲店からは、小容量の300ml商品のニーズが寄せられています。

さらに、吟醸造りの市場拡大を狙うのは純米吟醸「剣岳」。平成29年(2017)に新発売し、純米吟醸と特別純米、特別本醸造の3種類で720ml瓶や一升瓶に富山の名峰である剣岳のイラストを描いたラベルを使用しています。柔らかな口当たり、瑞々しい風味と穏やかな立ち香で、まだ銀盤ブランドを口にしたことがない新しいユーザーの獲得を狙う県外市場向けの商品です。

「改変や新開発した商品ともに、食中酒として幅広く料理や肴と合わせやすい品質です。昨今、特定名称酒の市場では、18号酵母を使用した甘くてフルーティな生原酒が人気ですが、当社の新商品・剣岳はあくまで、淡麗ですっきりとした味わいがモットー。実は、地元限定の季節商品で無濾過生原酒も発売していますが、銀盤らしく香りはふくよか、滑らかな辛口に仕上がっています」

松岡営業部長の自信に満ちた酒質評価に、新商品の無濾過生原酒の手ごたえを感じます。

松岡 寛 取締役営業部長
松岡 寛 取締役営業部長
小容量ボトルもニーズが高い
小容量ボトルもニーズが高い
純米吟醸「剣岳」のポスター
純米吟醸「剣岳」のポスター

流行りや時流に左右される商品価値ではなく、一本筋の取った、飲み飽きしない品質こそが、守り抜いてきた銀盤イズム。そのモットーは、最近手がけた無濾過生原酒にも生かされています。

「味の変化が大きい無濾過生原酒ですから、短期勝負の商品になるのは必須です。ですから、11月から2月までの4ヵ月限定商品としてリリースしました。思いのほか反響が大きく、ご好評を頂いていますので、来期の品質をどう修正していくか、現在、検討中です」

松岡営業部長の嬉しい悩みを聞いて、純米吟醸 無濾過生原酒を手に取ってみると、新鮮なデザインのラベルと「富の香」の文字が目を惹きます。聞けば、富の香とは、山田錦と富山県産の雄山錦を交配させた品種。山田錦に引けを取らない高品質を謳っているそうで、その解説は、後ほどの杜氏インタヴューに期待しましょう。

しばらく遠ざかっている「全国新酒鑑評会 金賞受賞」の獲得を目指す上でも、無濾過生原酒の出来栄えに銀盤酒造の力量が試されるでしょう。さらには、銀盤酒造の第2章を始めた社員たちの熱意と努力も味わえるはず。

「無濾過生原酒」シリーズ
「無濾過生原酒」シリーズ
第2章を始めた社員たち
第2章を始めた社員たち

パック酒からプレミアムな大吟醸まで、誰もが愛してやまない銘酒・銀盤の復活を確信するイベントがあります。平成30年(2018)からスタートした“蔵祭り”には、黒部市だけでなく、北陸一円からファンが押し寄せ、搾り立ての銀盤を堪能します。

その日、銀盤酒造へやって来るファンたちが目の当たりにする、感動の光景を紹介して、蔵元紹介を締めくくりましょう。

銀盤酒造の裏手に建つちっぽけな無人駅に、蔵祭りの来場者は降り立ちます。すると、ホームを独占するかのような青い大看板が目に飛び込みます。

「LOVE 銀盤! MOVE 銀盤!」のフレーズと「目の前にギンバン」のコピー。

アイデアいっぱいの遊び心には、新たな銀盤を創る、愛と行動があふれていました。

「目の前に銀盤!」の駅看板
「目の前に銀盤!」の駅看板
銀盤酒造の社屋
銀盤酒造の社屋