蔵主紹介

株式会社小嶋総本店

酒造りはオーソドックスに、経営はフレキシブルに、そして”良い酒”を食卓に!

酒造りはオーソドックスに、経営はフレキシブルに、そして”良い酒”を食卓に!

「東光」の銘を掲げる、瀟洒な尖塔、それとは対照的に、渋く光る甍を連ねた大蔵。
米沢の町と歩んだ4世紀の歴史と伝統をありありと残す社屋で、小嶋彌左衛門 社長のインタビューが始まりました。
「昭和48年(1973)、家業の酒蔵を継ぐべく、私はこの会社の一員となったのですが、その時にまず考えたのが、地元の皆様に今以上に愛される酒造り、つまりは地酒屋として“晩酌酒の品質を大切に!”ということでした。

具体的には、酒を濾過する活性炭の使用量を削減することでした。当時、お酒の濾過に使う活性炭は、業界を通して増加傾向にあったのですが、しかし、それでは、お酒本来の味を損ねてしまいます。確かに、活性炭は酒の不純物を取り除いてはくれますが、味そのものも落としてしまうのです。そこで、最初から加工しなくてすむ酒を造れば、活性炭の使用量を減らせるではないか、味のある酒造りができるではないか、と考えたわけです」

地酒屋としての営み
小嶋 彌左衛門 社長

小嶋社長は、濾過せず、できたての風味と米の旨味をそのまま活かすためには、貯蔵中に変なクセをつけないことが第一と言います。

その基本的な方法とは、温度管理によって熟度を抑えること。そこで、貯蔵庫にエアコンを導入することにしました。
さらには麹の造り方、発酵経過、精米歩合と見直し、結果、例えば普通酒のモロミの最高品温を13℃に設定することにしました。これは本来、吟醸酒クラスの温度なのですが、そうすることで酒質の変化を少しでも抑えようと努力したのです。

こうした工夫を通して活性炭の削減に成功し、現在、普通酒クラスでは、単位当たりの活性炭使用量は、おそらく全国でもトップクラスの少なさだろうと自負しています。
「それでは濾過がしにくくないか?」とよく質問されるのですが、当社は米の全量を自家精米していますので、原酒が色変わりすることもありません。自家精米と業者への委託精米では、それほど品質に差が出るのですが、それはともかく、いろいろな酒質改善の努力の成果として、地元での普通酒シェアに勝利できたのだと思っています」
東光は、あくまで米沢の地酒。だからこそ、米沢の人に、まずは喜んで頂ける酒を造ることが使命と語ります。

地酒ブームの到来とともに、時代は急速に特定名称酒(吟醸酒・純米酒・本醸造酒)へとシフトしていきました。
小嶋総本店でも昭和30年代から吟醸酒造りに着手していたのですが、まだまだ鑑評会用の酒といった認識しかなく、全国ブランドとしての販路拡大を志向するまでにはいたっていませんでした。
ようやくここにきて特定名称酒と普通酒の比率が50:50となり、今後の生き残り合戦に参戦できる素地が固まったと、小嶋社長は実感しています。そして、その必勝の戦法をどこに求めるかと問われれば、やはり“品質”以外にないと結びます。

「品質を追求すると、どうしても“手造り”に帰結します。当社では、大吟醸酒には“袋吊り”という昔ながらの酒の搾り方を採用しています。その麹も、蓋麹による手作業。これは非常に手間暇のかかる作業で、全製麹時間が約48~50時間にもなります。どうして、そこまで麹にこだわるかといいますと、この作業の善し悪しが、最後まで酒質に影響してくるからです。そして、私は当社の酒を、もう少し“肩肘張らない酒”にしたいと考えています。もちろん現状のお酒は、充分にハイレベルな合格点を頂けるものと信じておりますが、さらに良い酒、私流にいえば、もう少しリラックスした柔らかい酒にしたい思いがあるのです」
いわゆる飲み飽きしない、食中酒というポジションになるわけですが、そうした酒にするためにも、麹造りは重要なポイントと小嶋社長は言葉を重ねます。

全量を自家精米
全量を自家精米
品質こそが第一
リラックスする酒を追求

ところで、全量自家精米というのも、品質を重視する小嶋総本店の大原則です。
「精米歩合○○%」と言ったところで、いわゆる“見かけの精米歩合”と、一粒一粒が○○%に磨かれている“真精米歩合”では、当然、酒質に差が出ると小嶋社長は言います。
「本当に良い酒を造ろうとすれば、コスト高は承知で、この真精米歩合を追求せざるを得ません。このため当社では、何年も前から、使用する米の全量を自家精米しているわけです。精米歩合を下げれば儲かるという“悪魔のほほ笑み”は、当然ながら私にも魅力的なのですが、それでも品質第一を考え、今年もその誘惑には目をつぶって、なんとか高精白のお酒を提供していこうと頑張っております」

酒造りは“製造”でなく“醸造”と、小嶋社長は語ります。これは“酒を醸すとは、生き物を育てることだと自覚しろ”と理解し、ワクをはめても思い通 りに育たないのは、人間も酒も同じで、蔵元にできることといえば、育てるための環境整備くらいなものだろうと思っているそうです。
「創業400年という暖簾でメシが食えるわけでもなし、私に課せられた使命というのは、いかに時代に合った良い酒をつくり、皆様に受け容れて頂くかだと思っています。またそうすることで、次の世代に、この老舗の伝統をバトンタッチすることだとも考えています。どうか今後とも、ご支援・ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます」

つまり酒造りは、奇をてらうのでなくオーソドックスに、というのが造り酒屋としての王道。しかし経営者としての視野は、“あくまでも広く、フレキシブルに”が、成功の鍵を握ると小嶋社長は締めくくってくれました

真性精米歩合がモットー
オーソドックスな造り酒屋