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室町酒造株式会社 ~水・米・技の紹介

歴史ページでの花房常務の言葉にもあるように、少数の社員で構成されている室町酒造は、全員一丸で仕事に取り組むことがモットー。明るく朗らかな協調性と心の通った対話を重んじています。訪れたこの日も、製造現場では地元の名産である桃を使った夏季商品“清水白桃酒(しみずはくとうしゅ)”の仕込みに一致協力して励んでいました。

ちなみに、この桃の酒は昨年から取り組み始めた新商品なのですが、室町酒造近くの農家の方たちが名産の桃を「良かったら、使ってちょうだい」と現場に持ち込んで来るシーンもあったりと、地域に密着した社風も実感できます。そんな現場を支えるホープが、製造部の守中 修(もりなかおさむ)課長です。

「元々は大手乳製品の会社に勤めていたのですが、考えるところがあって転職し、室町酒造へ12年前に入社しました。実は、私は岡山大学農学部の卒業で、備前は第二の故郷なのです」
落ち着いた物腰が印象的な守中 課長は広島県の生まれで、その後、父親の転勤にともない茨城県筑波市の高校から岡山大学へ入学。専攻は畜産物利用学で、乳酸発酵に関して研究していました。
転職を考えていた時に室町酒造の求人募集を知り、懐かしい岡山への郷愁を感じつつ面接を申し込んだそうです。


室町酒造の仕込みは、4人の季節蔵人を中心に行われています。社員である守中課長は、円熟したその職人たちと寝食を共にし、但馬からやって来ている73歳の高美 稔(たかみみのる)杜氏を師と仰ぎながら製造工程から品質管理までを担当しています。

その恩師にみっちりと仕込まれている“室町酒造の雄町米の酒造り”と、どんなものなのでしょう。
「一言で申し上げることは、難しいですね。当社は雄町米に特化しているだけに、細やかなこだわりを持った製品を多種造っていて、それぞれが個性的なのです。価格面、酒質面、グレード面などさまざまなニーズを考えますと、商品セグメントを求めざるを得なくなります。例えば、味わい一つにしても、甘口系の県内向け商品を首都圏用にはやや辛めに調整したりと、微妙に工夫しています。現在、アルコールの種類は飽和していますから、一つの酒米に特化している当社は、より嗜好性を考えた品質と種類を追求しなければいけないと思います」

守中課長の言うように、酒質の微妙なちがいを探求していけば必然的に製造技術や品質水準は高まります。すなわち、室町酒造の商品すべてが高いアベレージを持っているわけです。
「とは言うものの、これがけっこう造り手泣かせなんですよ」と、守中 課長は苦笑いします。
新たな商品企画が花房 社長から持ち込まれるや、蔵人たちは「えっ! またやるの」と目を白黒させますが、そこを若さとやる気で調整するのも守中 課長の仕事のようです。

それでは、守中 課長が現在修行中の酒造工程について、具体的に解説をお願いしましょう。
「私は、麹造りがやはり一番大切だと思います。それには、上質の米と水が欠かせません。
当社の雄町米のこだわりは社長からお聞きだと思いますので、醸造用水に使っている“雄町の冷泉”について、まずお話ししましょう。この水は岡山市雄町という場所に古くから湧き出している地下水で、別名“殿様井戸”と呼ばれています。昔は、池田藩の蔵主専用の御用水で、水奉行を置いていたそうです。水質は軟水なので、モロミはおだやかなアルコール発酵になります。仕込みの時期には、私がタンクを載せた軽トラックで1日2回以上往復して汲んでいるんです」

この“雄町の冷泉”は日本の名水百選にも選ばれており、岡山市雄町の住宅街に位置しています。美味しい水を求める人並みが絶えず、数年前には地元住民から行政側へ陳情が起こりました。その結果、近くに“雄町アクアガーデン”を建設、公共の水場が完備されています。
「以前は多くの蔵元がこの名水を使っていたそうですが、今では当社のみとなっています。しかし、この名水抜きに“櫻室町”はあり得ません」と、守中課長は声を高めます。

蒸し米や酒母・モロミが軟水仕込みなら、当然、腰のしっかりとした麹が必要になりますねと筆者が訊けば「ええ、ですから基本に忠実な麹造りを心がけています。当社は全量自家精米ですから、米の品質が安定しています。そして、米洗いや給水にも0.1秒単位でこだわっています。ですから、バラつきのない麹米を造ることができます。特に、最高品温になってどれぐらいの時間を引っ張るか、気を配っています。短いと味の乗らない酒になりますし、長いと麹の溶けてしまった酒になります。ちょうど良いポイントが、どこなのか。状況に応じて臨機応変に判断できる力が、今の私には必要です」と守中課長は答えます。
深夜の切り返し、仲仕事、仕舞い仕事と、仮眠を取りながらの作業が続きますが、昔と変わらぬその空気こそ“地産地消”の酒造りにふさわしいと筆者は感じます。
酵母は速醸型の協会酵母が中心で、こちらも基本に沿った、ブレの少ない品質の物を選んでいると言えます。

次代のリーダーを目指す守中 課長ですが、まだまだ多くの課題に取り組まねばならないと謙遜します。

「各プロセスごとの段取りやテクニックの修得だけでなく、それを元にしたトータルな酒造りのコーディネーションですね。遠い道のりかも知れませんがですが、高見 杜氏がなさっている製造計画から皆造までの総括的な仕事を、1日でも早く修得できればと思います」
そんな本人の胸の内を、見抜いていたのでしょう。一昨年の仕込みシーズンから、花房社長が高見 杜氏に相談して、守中 課長にタンク1本分の酒造りを任せているそうです。
「緊張と不安の連続、失敗と成功の繰り返しですが、教えを請うのではなく、自分から学び取る姿勢が大事だと痛感しました。杜氏や蔵人は厳しい職人の世界を経験されてきただけに、待っていてはいけないのです」
チャンスを与えてもらい有り難く思っていますと、守中 課長は表情を引き締めます。
また守中 課長は、花房 社長が入手した全国の他社商品を、杜氏や蔵人、社員とともに試飲し、さまざまな意見交換を行うそうです。
これも、室町酒造流のチームワーク作りでしょう。

締めくくりとして、今後の日本酒とはどう嗜好されていくのかを、36歳という視点から客観的に語ってもらいました。

「日本酒の価値観が、分かりにくくなっていますよね。基本的に、日本酒は食中酒だと私は思うのです。食が始まれば酒が付き物、酒が進むと食が欲しくなる、両者は切っても切れない関係です。つまり、日本酒は日本人の食文化の中で進化してきたんです。しかし、最近は食材や食べる形態がどんどん変化してきて、私も含め、若者たちの舌の感覚は昔の人たちとずいぶん異なっていると思います。ジャンクフードやファーストフードに慣れてしまって、そうなるとアルコールの好みも変わってきます。だから、そんな人たちに日本酒を分かってもらうには、日本酒の持っている価値観をもっとアピールするべきだと思います。

日本酒は幅広い料理ジャンルに合いますから、若者に人気のいろんな洋風料理に合わせる提案もいいでしょうし、私ぐらいの年齢の方には、“たまには、日本酒でスローフード”的な紹介も喜ばれるでしょう。特に、当社のような地産地消をモットーにしたお酒は、ピッタリだと思います」
たまの休日、大学時代の先輩に合って酌み交わせば、そんな酒談義にも及んでしまうと言う守中課長。熱いハートに、先輩や友人は「お前の造る酒、美味しいよ! 俺、いつも櫻室町を飲んでるぞ。周りにも紹介してるからな」とエールを返してくれるそうです。
陽に焼けた笑顔に、白い歯が爽やかな守中 課長。聞けば、大学時代からアメリカンフットボールを続けているスポーツマンでもありました。
年々の雄町米の稔りとともに、彼の技量・才能が大いに結実することを期待しつつ、インタビューを終えることにしましょう。