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新潟銘醸株式会社 ~蔵主紹介

平成16年(2004)10月23日の夕刻、小千谷市や長岡市一帯を突如として襲った激震はマグニチュード6.8~7を観測し、大被害を発生させました。
おりしも土曜日、自宅でくつろいでいた吉澤 貞雄 社長は、とっさに身を立てようとしましたが、あまりの揺れに自由が利かず、なすすべもなく座り込んでいたそうです。

そして揺れが落ち着くと、室内は足の踏み場もないほどの乱れよう。とにかくも家族の安全を確認し、その後に会社へと向かうつもりでしたが、すでに夕闇迫る頃。翌朝にすることとして、自宅の片付けに没頭しつつも、収まる気配のない余震に不安な夜を過ごしたそうです。

「一夜明けてみると、我が目を疑いました。茫然自失とは、あのことを言うのでしょうね。路面はうねり、マンホールは飛び出し、至る所で壁と塀が崩れ落ちていたのです。これはとんでもない事態だと矢も盾もたまらず会社へ参じると、一番古い木造の蔵が無残な姿に変わり果てていました。むろん、瓶詰めされた製品は大量に割れ、タンクは傾いたり、底部に穴が開いたり、野外タンクではしっかり固定していたボルトが引きちぎられていて、揺れの凄まじさを実感しました。それでも社屋内で誰一人として事故に遭っていなかったこと、製造設備・瓶詰めラインもほぼ稼動できて、精米所の被害がほとんどなかったことは不幸中の幸いでした」

パソコンに保存している当時の記録画像をもとに、まずは吉澤 社長の回顧談話が始まりました。
読者の方々の記憶にも、10月25日全国放送のテレビニュースで新潟銘醸の風情ある木造蔵が余震で倒壊していくシーンは、まだ記憶に残っているのではないでしょうか。あの瓦礫の下に埋もれていたタンクのいくつかは無傷で、吉澤 社長は、打ちひしがれている社員の士気高揚と励みのためにとクレーン車で取り出して、瓶詰めしたのです。
その貴重な酒を、全国の長者盛ファンが待ち侘びていました。

復興から4年目の現在、社内設備は以前にも増して機能的に整えられました。最新式のサーマルタンクはしっかりと固定され、その堅牢さを誇示しているかのようです。
その中には、関東市場を中心に人気を得ている「越の寒中梅」が眠っています。
麹室では、老練な杜氏の指導のもと、若い蔵人たちが大吟醸になる麹米の仕込みに勤しでいました。
彼らの求める新潟銘醸の酒とは、単に「淡麗辛口」ではない、まろやかな旨味とおだやかな香りのある酒。これからも、それを継続していくことが新潟銘醸のモットーであると、吉澤 社長は語ります。

「“長者盛”には、長者のように秀でた酒を造りたいという、初代社長・勇次郎の酒造りへの熱い思いが込められています。と申しますのも、当社は昭和13年(1938)の設立であり、まだ歴史は短く、それだけに良い酒を造らなければ誰からも認めてもらえないという危機感があったからでしょう。良い酒を造ることは蔵元の使命ですが、それでは良い酒とは何か? この答えは、一様にはいかないようです。例えば、当社はお蔭さまで、何度か新潟県1位の表彰や全国新酒鑑評会で金賞・入賞を受けましたが、すべての商品に、この評価に準じる各ジャンルでの品質の良さがなければ、受賞の意味はありません。常に、丁寧に造った高品質の製品を提供し続けること以外に、当社が当社でありつづける道はないと確信しています」

そうした思いから、吉澤 社長は製造技術の安定のため、標準化とマニュアル化を推進してきました。ISOを取得したのもその目的のためですが、設計・製造から検査までの一連工程での管理能力を“品質システム”として捉えていこうというものです。

「近年は、コンプライアンスやトレサビリティといった新たな社会基準が謳われるようになり、清酒も食品の一つとして、お客様から正しい製品であることを認められねばなりません。国税に関わる酒造りですから法律・規則がいろいろと設けられてはいますが、消費者の皆様からすれば曖昧模糊とした点がまだまだあるかも知れません。そんな点を開明して、お客様に安心・安全をまず納得して頂くには、この“品質システム”が重要になってきます」
また、その品質システムを標準化することで、蔵人たちがきちっとした酒造りをしていくことができるし、企業としての資産にもなると吉澤 社長は考えたのです。

吉澤 社長は、“食とともにある日本酒”を強調します。
新潟銘醸の美酒が旨味ののった、飲み飽きしない酒であることは、そこに秘訣があるようです。
「小千谷は山間の地ですから、かつては蛋白源が乏しかったのですね。ですから、錦鯉ももともとは食用だったわけです。また、寒い土地ですから、味噌・醤油もいくぶん濃かったのではないでしょうか。当初の長者盛は、そんな味覚に合った旨さを持っていたようです。それが、時代とともに革新を重ねて、進化してきているわけです。今では日本海の魚も豊富ですから、グルメな方も増えてきました。とりわけ、地元の食と楽しむのであれば、“へぎ蕎麦”ということになります。つなぎに“ふのり”と呼ばれる海藻を使っていまして、食感がとても滑らか。ですから、当社のまろやかさのある酒と相性がよろしいわけでしょう。“へぎ”の語源は、杉の板を“へぐ”にあって、木の皮を剥がして作った箱に入っているから、そう呼ばれるようになったのです。ちなみに、小千谷の“へぎ蕎麦”は、小千谷蕎麦組合所有の登録商標なのですよ」

地酒は、やはり地元の味覚との相性が大切と、吉澤 社長。新潟銘醸が主催する「小千谷蕎麦と金賞受賞酒を楽しむ夕べ」には、300人を超えるファンが集まるそうです。
その開会直後のこと。参加者全員で、まず杯を乾したのですが、どうしたわけか会場全体に一瞬の静寂が訪れたのです。
いぶかる吉澤 社長たちをよそに、その静寂は、すぐさまどよめきへと変化しました。
ゲストの金賞酒への感動が社長へと伝わり、鳥肌の立つような喜びと感謝の思いで胸がいっぱいになったと、その日のことを吉澤 社長は振り返ります。

吉澤 社長に案内して頂いた、仕込み蔵の中では、いよいよ連続金賞に向けた全国新酒鑑評会に出品する大吟醸が搾られようとしていました。
そのたおやかな香りに満ちた上搾場で、吉澤 社長はこう締めくくってくれました。
「名誉ある高い評価を頂くことは、確かにありがたいことです。でも、そこには懸念すべき課題もあります。それは『自分の酒が、一番良い』という驕り高ぶりです。近年のお客様はとても正直ですから、味の変化にも敏感です。ですから、私はできるだけ耳を澄ませ、お顔を拝見しながら、当社の酒について忌憚のないご意見を頂きたいと願っています。今や、日本酒の品質、製造技術はいずことも大差のない高いレベルに達しています。つまり、味が良いことは当然であって、お客様の“美味しい”の先にある“嬉しい、楽しい”という酒の価値作りが、当社の酒造りの根本にあるテーマなのです」
新潟銘醸では、地元ファンとの交流イベントや全国各地の売り場で試飲会なども催し、お客様と意義のあるコミュニケーションを結んでいます。

温かい励まし、厳しい指摘。その一つひとつが、数々の銘酒のしずくの中に生かされているのでしょう。