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黒澤酒造株式会社 ~水・米・技の紹介

中沢 礎(いしずえ)杜氏は、黒澤酒造の半被を着て50余年。一唱三嘆するような生年月日は、昭和10(1935)年1月1日。縁起のいい生まれです。
出身は、越後杜氏の里として知られる新潟県刈羽郡小国町とのこと。

中学卒業と同時に、まずは愛知県の蔵元へ8年間出稼ぎ、蔵人としての胆力を磨きました。同じ小国町出身の蔵人集団に入ったことで競争心も高まり、伸び盛りの中沢 氏は自身の求める酒造りを模索し始めます。
昭和34年(1959)、黒澤酒造株式会社の杜氏や蔵人がそっくり辞めてしまいます。入れ替わりに、中沢 氏は先輩や仲間たちとともに、造りを請け負うこととなりました。それから4年後、中沢 氏は妻と子どもを連れて旧八千穂村へ移り住みます。

しかし、それを決断する際には悲憤慷慨の事件も巻き起こりました。
「私も妻も零細農家の養子養女なんですよ。ですから、育ての親は決して首を縦に振りませんでした。それどころか、人でなしだの、縁切りだの、とんでもない騒ぎになったんです。でもねえ、実家の田畑も少なくて、このままじゃ一生ウダツも揚がらないし、冬場だけの酒造りじゃ食っていけないし。だから、勘当覚悟で決心したわけです。実は先代の黒澤 社長さんに、年間雇用をお願いしたんです」
中沢 氏にすれば、自分も家族も、そして職場も、すべてが新たな人生の船出となったわけです。
笑顔で懐かしむ中沢 氏ですが、おそらく当時は切歯扼腕の日々だったでしょう。

その後、43歳で杜氏となり、黒澤酒造を担ってきた中沢 氏ですが、今の日本酒業界のありかたにはやや愁嘆すべき点もあるそうです。
「お客様に楽しんでもらうために、いろいろな飲み口の酒が生まれるのは良いことですが、どうも全国的に品種が増え過ぎている気がしますね。私たちも生酛造りに取り組んでいますが、これはこれで伝統的な造りに絞り込んだ酒質として、自信を持っています。しかし、この範囲をあまり広げ過ぎてはいけませんね。今はとにかくスピードも要求される時代ですから、闇雲に増やしすぎると、自分たちの造りがぼやけてきます」

中沢 氏としては、やはり自分たちの技量でとことんこだわった酒造り。つまりは「全国新酒鑑評会金賞酒」こそ、生涯の夢だそうです。
そのためにも、次期後継者作りは大きな課題として任されています。中沢 氏は2009年度より顧問になり、黒澤 一雄 次男 洋平が杜氏になりました。

現場では勘所・判断時点を徹底的に肌身で覚え、机上では配合・係数など事前の確証性を養っていくこと。この二つが今の人材には不可欠だと、中沢 氏は自分の来し方を鑑みて提言します。
しかし、昔の師弟関係のような厳しさも薄れた現在、前者の体得は生半可なことでは難しいとも語ります。

「やはり、機械設備と人の手をバランスよく回して行くことでしょうね。まだまだ、私は手の方で、頑張らねばと思います」
現場の顔つきとは打ってかわり、おだやかに目尻をほころばす中沢 氏。
膝上に組んだ両の掌も米を触り込んでいるせいか、瑞々しい色艶です。50年の経験で、酒の造り方も人の育て方も、心底悟っているのでしょう。

さて、インタビューは黒澤酒造の酒質の特徴に進みます。
気候としては氷点下ですし、まさに寒造りそのもの。しかし、試飲した数点の銘柄からは、いわゆる「淡麗辛口」は認められません。この疑問点に、中沢 氏は自身のこだわりを全面的に打ち出します。
「一番狙っているのは、辛口は辛口ですが淡麗ではない口当たりです。私自身、淡麗は好きではありませんから。まろやかな濃さがありながら、幅のある辛口酒ですね。私たちが一番最初に聞くのは地元のお客様の声です。晩酌をされる方には『井筒長は、やっぱり辛口でなきゃ』と言われますが、だからといって、レギュラーな人気の清撰クラスだけでは、市場に対応できません。双方の嗜好に棲み分けた辛口の酒が、これからの課題でしょう」
では、そのポイントは?と突っ込んでみますと、「やはり、米と精白にこだわることでしょう。当社の酒米はほとんどが美山錦で、根強い人気があります。これに1990年代からは、長野県産のひとごこちも加わりました。この地元品種は非常に柔らかく、特徴のある味を醸します。特別純米、特別本醸造などに使っていますが、こちらの人気も徐々に高まってきました」

濃醇辛口という黒澤酒造独特の酒質は、軟水系の千曲川伏流水のおかげでもあると、中沢 氏は付け加えます。
また、特定名称酒は中沢 氏お気に入りの長野酵母に特化した造りだそうです。
半世紀の酒造りに培われた、こだわりと収斂の技。
矍鑠とした中沢 氏の担う重責はこれからも続きますが、その先には全国新酒鑑評会金賞が燦燦と輝いているはずです。