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宗政酒造株式会社 ~水・米・技の紹介

宗政酒蔵が清酒の製造をはじめてから20年余り、銘酒”宗政”を一手に育て上げてきた古賀 強 杜氏は御歳82歳、杜氏暦36年の大ベテラン。
今では使用している蔵元も多数あるであろう、大型製麹器での吟醸造りを開発された方だ。
「終戦の直後、進駐軍に納める酒を造る別府の成清酒場にて酒屋男の第一歩を踏み出したんですよ。当時は『酒屋男せない男にゃ嫁やるな』と言われるほどいい職業だったんです。」
16歳にして酒屋男の道に飛び込んだ古賀杜氏。その後も様々な蔵元で酒を造り、過去10年で熊本国税局主催の新酒鑑評会の金賞を14も受賞するなどの実績を積み重ねてきた、その腕が見込まれ、宗政酒蔵が清酒造りを開始した年、清酒”宗政”のすべてをまかされたのだ。


そんな清酒”宗政”の全てを知る古賀杜氏に”宗政”というお酒について聞いてみた。
「当時は大吟醸の金賞受賞ばかりを考え、吟醸造りに奔走していました。
しかし、ある時気づいたのです。本当に大切な事は『”宗政”を購入してくれたお客様が旨い善い酒だ』と飲んでもらえる酒を造る事だと。
それ以降、蔵人が『輪・話・和』を持って一丸となり、お客様の好みにあわせた酒造りをしてまいりました。それが今の”宗政”の甘口の酒です。」

淡麗辛口の地酒が好まれるこの時勢において、甘口の宗政は、地元・佐賀の消費者を見たお酒ということだ。
「営業とは幾度となくぶつかりました。佐賀では甘口、福岡では辛口、熊本では濃く、上方では淡麗なものが好まれると。実際、蔵として酒が売れなくては困ります。大市場である東京や福岡で好まれる酒を少しでも仕込んでくれとお願いされた事もありました。しかし少量では本当の酒は造れません。それであれば佐賀のお客様に認めてもらえる酒を、というわけです。」

それでは酒造りについて、まずは仕込み水に関して語っていただきましょう。

「毎年、米の出来が違う、気候が異なる、酵母が変わるなど、さまざまな要因が酒造りで困ります。その中でも仕込み水には謎が多く、一番困るところですが、最も重要な酒源とも言えます。
ここでは、黒髪山の伏流水を使用しています。軟水であるこの水を使うことにより、味深い酒・濃い酒・旨い酒ができています。また、この水のおかげで、造りを超えて『香り』『味』にもいい影響があると信じています。」

なるほど、水の成分表を見せてもらうと、硬度14と"まさに軟水"という数値。黒髪山水系は水源の森百選にも選ばれるほどの名水、宗政のやさしい味わいがこの水のおかげというのも頷ける。
「欲を言うと、カルシウムとマグネシウムがもう少し含まれているとうれしいですね。大満足とまではいかないですが、この蔵ではこの水が一番だと思っています。」
と笑顔の古賀杜氏。

次に原料米についてお伺いします。
「原料米は佐賀県産米に限定しています。当社では西有田の農家に契約栽培をお願いしている特定銘柄山田錦を使用しています。こちらは米粒が太いとは言えませんが、心拍が真ん中にあり、侵漬が漬かりやすいですね。」

この米の温度を10℃に合わせ、手洗い方式で9分~9分半侵漬させ、朝まで湿った帆布で包み寝かせる。これを蒸し、麹室へと運ぶといよいよ麹造りの始まりです。

「麹室では湿度30%-35%、室温を33℃以上にし、40℃くらいまで冷ました蒸し米を引き込み、床に薄く広げ種付けを行います。さらに2時間後に裏返し種を振り、30℃くらいになったところで寄せ込み、軽く布団を掛け翌朝まで寝かします。」

ここで一連の工程を説明する古賀杜氏の足が速まる。長い床を進み、奥の麹箱へとたどり着く。
「この大箱製麹箱は20年程前に私が考案したものなのですよ。」
ここで初耳の情報に取材陣も唖然。さまざまな蔵で使われている製麹箱の生みの親が説明してくれているとは夢にも思わなかった。

「年のせいもあり、深夜の製麹操作もしんどくなってきたんですよ。それに加え後継者不足が深刻化し、初心者でも一定の品質の突き破精麹を作れるようにしたかったのですよ。」
そう語りながら紙に構造の説明をしてくれる杜氏。材料はホームセンターで買い揃え、自作したのだとか。

「まず、この製麹箱は上下の階層に分かれています。もちろん上層は麹を盛ります。
ここに工夫がしてあり、盛り・仲仕事・仕舞仕事と段階に分けて麹の盛る厚さを調整しなければならないのですが、この箱では仕切り板を動かすことにより、その広さで均一に盛れば、おのずと最適な厚さで盛れるようになっているのです。
また、この敷布を持ち上げ麹を混ぜることが出来るので清潔さも保てます。」

「さらに麹造りで難しいところは、温度管理と湿度管理です。
乾きすぎても水分がありすぎてもだめです。これを解決するため、この製麹箱の下層には裸電球と換気扇、温度センサーなどがついています。
裸電球は加温、乾燥を、換気扇は冷却と乾燥を行うことが出来ます。あとは係りのものが一定の条件になったらスイッチをon・offするだけで、麹にとって最適な環境を作れるわけです。」
今までの古賀杜氏の経験があったからこその、絶妙のセッティング。その発想と自ら作ってしまう行動力には驚かされた。

現在、杜氏を含め、4名で酒造りを行っている宗政酒造。
「私は主に大吟醸係りです。それ以外の酒造りに関しては皆に任せています。それぞれ担当している酒があるものの、皆自分の担当部分のこと以外、関わりを持たないのが困っています。自分が休みでもう一人がでているときも、自分の酒以外見ようともしません。4人という少人数で造っているので、もっと蔵人同士”話”が必要ですよ。一言『明日休みだからちょっと見といて』と声をかけるだけで、大分変わると思いますよ。蔵人の”和”が足りないんですよ。蔵人の和が高まれば、もっともっといい酒を造れますよ。」
そう語る古賀杜氏の笑顔には蔵人を和ませる何かがある、この笑顔が蔵人たちを”和”の方向へと導いてくれるのだろう。

最後に古賀杜氏に今後チャレンジしてみたい日本酒について聞いた。
「今、私が考えているのは、甘口の高濃度酒を氷などで割って飲む酒。そのためにはやはり味を濃くすることもさることながら、香りを高くすることが大事だと考えています。低アルコール酒などではだせないパンチのある酒を造りたいですね。」

まだまだ現役の古賀杜氏。そんな名杜氏の”匠の技”で搾られる、新たな宗政の”和”の雫。その完成が待ち遠しいのは筆者だけではないだろう。