蔵主紹介

中埜酒造株式会社

新たな時代にも、”買う身になって、まごころこめて、よい品を”

日本酒の蔵元にとって栄えある全国新酒鑑評会で、金賞に評価されることはもちろん、最近では国内外で開催される様々なアワードに入賞することは、ブランドを世間に認知いただく重要な取組みと位置付けています。そのために過去から積み上げてきた人的技術と持てる設備、科学的評価を組合せ最善の製造清酒醸造に挑戦しています。

「当社に連綿と継承されている哲理とは、“買う身になって、まごころこめて、よい品を”です。ひと握りの造り手が幻の酒を造り、そのブランドを希少化する商品とは真反対です。我々は、どのような種類の酒やグレードであろうと、常に安定した高品質の商品を、お値打ち価格で提供することが本位なのです」
そう語るのが、九代目蔵元の中埜温子(なかの はるこ)代表取締役社長です。
まずは中埜酒造の企業理念、現在の指針を訊ねてみましょう。
「当社の理念は、その基本に、Mizkan(ミツカン)から受け継いでいる家訓の“三身(さんみ)の精神”と言うものがあります」

一、 買う身になって、まごころこめて良い品を
一、 働く身になって、まごころこめて良い経営を
一、 経営者の身になって、まごころこめて良い能率を

中でも、最初の一カ条を中埜酒造は企業理念として掲げているのです
その答え通り、中埜酒造は、薫り立つ吟醸酒から経済酒的な上撰クラス、そして果実系リキュール、あま酒、梅酒など幅広い商品群を揃え、買う側にも売る側にもwin & winな商品として好評を得ています。

様々なアワードで好成績
中埜 温子 代表取締役社長
中埜家の家訓は、三身の精神

中埜酒造は多彩な販売チャネルを持ち、地元市場を4割に全国展開していますが、今後課題となるのが消費人口の変化への対応力。つまりは、ヘビーユーザーの飲料が減り、なおかつ少子化の取り組みを中埜酒造はどのように取り組むのかを訊ねてみました。
「当社は、この10年間に“酒質主義”の再強化を掲げ、従来の品質をさらに研ぎ澄ませることを優先しています。例えば、上撰クラスの品質は本醸造にグレードアップ。吟醸造りの特筆すべき新商品としては“國盛 彩華 大吟醸”という新商品を開発しました。高品質とリーズナブルな価格がご好評を頂いています」
まだまだ伸びるでしょうと中埜社長が期待する彩華 大吟醸は、他社の大吟醸と差別化された“宅飲みで楽しめる、プレミアム品質”。この商品を開発するに至った背景には、特定名称酒の市場と商品についての緻密なマーケティングが存在します。

いわゆるマニアに人気が高い地方蔵元の吟醸酒を調査し、味わい、価格と品質について社内で徹底的に協議すると、國盛にとって優位な吟醸酒の市場が見えてきました。それはビギナーや若い世代の財布に優しい価格帯と、プレミアムな大吟醸を好むユーザーでも手に取る高品質を明確に打ち出すことでした。
「國盛のブランドは、ニッチな手造り吟醸の全国市場では認知されていません。拙速にそこへ挑むのではなく、我々の得意とする地元市場にお応えする大吟醸の魅力を、まずは追求したのです」
中埜社長が指示した商品開発に、中京地区の料理店グループや居酒屋チェーンと営業部がメニューとの相性を検討。これを製造部と昼夜を徹して練り上げ、現代のお客様の嗜好に合う味わいと品質に仕上げました。そして、テストマーケティングを繰り返しながら完成したのが、彩華 大吟醸でした。

中埜酒造の強みの源泉は、先代である八代目蔵元・中埜昌美氏の時代に築かれた革新的な体制にあります。旧来の季節労働の杜氏に頼る酒造りから、業界に先駆けて社員制へと移行し、最新鋭の四季醸造設備を導入することで、安定した高品質を生み出す「酒質主義」を確立しました。

人気の「彩華 大吟醸」
製品開発の様子
蔵人の現場から、社員制へ

当時、新潟からやって来る職人たちは、長年「國盛」の味を任せてきた信頼の置けるメンバーでしたが、いかんせん年齢も高く、若い担い手が年々減少していました。
先代の中埜 社長は、いかにすれば品質を落とさず省力化と安定化を図れるかを模索し、最新鋭設備と熟練職人の連携、そこから後継者となる製造技術者を育て上げることを決意します。現在もテーマとする“酒質主義”の誕生でした。
こうして、昭和59年(1984)に新國盛蔵が完成し、現在の四季醸造体制がスタートしたのです。投じた資金は年商に迫るほどで、常識を超えた大胆な構想は、設備化をめざす日本酒メーカーとして先陣を切るものでした。

また平成以後の中京地区では、地元メーカーによる吟醸酒の開発が後手に回り、愛知の酒は全国市場に乗り遅れていました。
つまりは、ブランド力の浸透には時間がかかる。そう読んだ中埜社長は、“地売りの味と質”を見直し、地元密着型の戦略を営業担当者と立て直したのです。

職人作業を機械化する
最大5万石生産の新しい國盛蔵
全国展開する多彩なリキュール商品

さらに、時代の変化を見据え、日本酒にとどまらない商品展開にもいち早く挑戦。知多半島南部に自社農園「國盛FARM」を開設し、社員自らが約3,200本もの梅の木を愛情込めて育てて造る梅酒や、多様な果実系リキュールは、現在の中埜酒造の大きな柱となっています。近年は梅酒を筆頭に、多彩な果実系リキュールを矢継ぎ早に開発しています。
「リキュール商品には、専門的な部門を置いて取り組んでいます。また、梅林も当社で手がけ、社員自らが梅の実を収穫しているんですよ。国内のリキュール市場は飽和状況ですが、当社では高濃度の果汁製品Fruilia(フルリア)や差別化した梅酒には自社農園梅を使うなど、ひと工夫加えた商品を生み出しています。」
その言葉通り、リキュール商品はざくろや和梨を使うなど、目をみはるほどユニークで斬新!
10年後には、どこの清酒メーカーの基幹商品としても欠かせないアイテムだけに、先見の明を実感します。

梅酒の原料の梅を育てる自社農園

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農園に立ち並ぶ梅の木
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上空から見下ろす広大な梅林
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収穫作業の様子
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梅の木に実った大粒の梅

先代が築き上げた確固たる基盤と「良い酒を造る」という精神のバトンを受け継いだのが、九代目蔵元となる中埜温子新社長です。温子社長は、これまでに培われた技術力という最大の武器を活かしつつ、激しい時代の変化に順応するための新しいアプローチを提案しています。
温子社長が特に重視しているのが、「生活に寄り添った身近な日本酒」の提案です。長年主婦として過ごしてきた経験から得た「お客様が何を求めているか」という感覚を活かし、従来の「おじさんが飲むもの」というイメージを払拭しようとしています。
お洒落なボトルデザインやグラス、料理とのマリアージュ、さらには炭酸割りといった新しい飲み方を提案することで、20〜30代の女性や若年層が思わず手に取りたくなるシチュエーションを創出していきます。
中埜酒造が実施する人気イベント「酒造り一日体験」にも自ら参加し、造り手やお客様と同じ目線で酒造りを分かち合うことにも取り組んでいます。
これからの酒造りにおける評価基準の転換も、温子社長の大きなビジョンのひとつです。従来の日本酒業界にあった「欠点がないこと」を良しとする文化から、「ここが素晴らしい」「この個性が面白い」といった、ポジティブな側面や個性を伸ばす酒造りへと舵を切っていきたいと考えています。

また、純米酒や吟醸酒などの特定名称酒への関心の高まりや、和食のユネスコ無形文化遺産登録による海外需要の拡大といった環境変化を好機と捉えています。安売り競争には走らず、中埜酒造の歴史やポリシーをしっかりと伝えた上で、ECサイトの活用や海外富裕層向けインバウンドツアーなどを通じ、その価値を認めてくれる人々に届ける高付加価値化を目指しています。

先代が築き上げた基盤と精神を受け継ぎ、
新しいアプローチを提案する
海外人客も「芳醇麗酒」を利き酒
海外人客も「芳醇麗酒」を利き酒

「日本酒は苦手だったけれど、國盛を飲んで好きになったと言ってくださるお客様を一人でも増やしたい」と語る温子社長。
先代が築いた揺るぎない品質と革新の精神を土台に、主婦や女性の柔らかな感性を取り入れた「愛情のサイクル」で、これからも地元に根ざした「本当に美味しいお酒」を私たちに届けてくれるはずです。

愛知の銘酒「國盛」