水・米・技の紹介

高砂酒造株式会社

北海道を味わい、旭川を感じる

北海道を味わい、旭川を感じる、オンリーワンの吟醸蔵へ。

「酒というのは、基本、杜氏が変われば味も変わるものだと思っています。ただ、杜氏が意識して酒つくりの設計図、レシピそのものを変えることはありません。
たとえば「一夜雫」だと、完成されたプロセスがあるわけです。そのプロセスにのっとっていれば安定した品質で提供できます。ただ、杜氏が変わることによって、あるいはその年の米の質の変化などによって、はからずも変わってしまう部分が出てきます。少しでもその味が変わってしまえば、同じ酒を飲み続けているファンの方は絶対にわかります。恐ろしいですよね。」
と高砂酒造の大きな醸造工場で話してくれたのが、森本 良久 杜氏です。
森本 良久 杜氏は、昭和44年に生まれ、平成3年には日本清酒㈱に入社しました。
17年間酒造りに携わった後、平成20年に高砂酒造㈱へと異動し、平成20年12月から杜氏として勤務しています。

高砂の酒は、基本的に辛口タイプだけれど、味のやわらかさを大事にするタイプの酒が多いと思います。大吟醸クラスの酒の仕込がすごく多いので、今は、レギュラーの大吟醸をいかにうまく造っていくかを考えています。袋吊の雫搾りは、「一夜雫」とか限られた酒にしか使用しません。そういう最高クラスの少し下のクラスの大吟醸でも搾りはヤブタ(圧搾機)でやるんです。でも、この蔵にあったやり方で、この蔵の持ち味を出しながら、少しずつ変えていくことはできると思っています。
高砂酒造は、北海道ならではの酒を造れるいい条件が与えられています。たとえば、米であったり、水であったり、気候であったり。そういった与えられた条件の中で、長所を100%生かせれば最高の結果が出せるはずです。山田錦が最高で、吟風がそれほどでもない。というわけではなく、吟風なら吟風のいいところを100%出してやればきっといいものができるはずなんですよね。高砂酒造はそれができる蔵だと信じています。 そう誇らしげに森本 杜氏は語ります。

森本 良久 杜氏
ヤブタ(圧搾機)

全国誌などでもよく紹介されて、名物となっている「雪氷室」と呼ばれているアイスドームや、雪の中にタンクを埋め、0℃前後の熟成環境で低温熟成させる「雪中貯蔵」など、寒さや気候的な特徴を生かせるという意味で、それは酒の個性になっています。
「それをきっかけに、お客さんが知ってくれたり、買ってくれたりしますね。高砂酒造は、「雪氷室」や「雪中貯蔵」を含めて伝統を守っているんだなと感じます。そういった環境を造るのは大変なんですけどね。全部僕らがやりますので(笑)」
と楽しそうに森本 杜氏は話してくれました。

「雪氷室」

高砂酒造の使用しているお米のこだわりについて聞いてみました。
「高砂酒造は特定名称酒に特化している蔵なので、「良い材料」を使用しています。精米歩合が低いものを使えるというのはもちろんですが、質そのものも北海道産と本州産の米を半々で使っています。高砂酒造では、「このお酒」に「このお米」というように一つずつ吟味して決めています。
 たとえば、東北の米だと秋田・山形、関西だと山田錦のある兵庫、あとは北海道の米だと地元の永山とか西神楽や旭川市内のものを使用しています。耐冷性品種の「彗星」や、旭川のほか愛別のものなど、様々なお米を使用しています。また、醸造を委託され、それぞれの産地の米を使ったお酒を造っていて、各々の産地に還元することで、その町のお酒になるというストーリーがあります。
「風のささやき」や「法螺吹」など、高砂酒造にはそういうお酒がたくさんあります。」

高砂酒造では様々なお米を使用

「高砂酒造もそうですが、北海道内の蔵では杜氏さんの代替わりが進んでいます。僕達の年代(40代)がそれぞれ、違うところで苦労しながら世代交代をしていくのかなと思います。代替わりして年齢が下がれば、色々なことが変わっていきますが、みんなで教えあったり、助け合ったりしていますね。
 高砂酒造の蔵人は、女性もいますし、年配の方や若年もいます。また、社員もいれば仕込みの時期だけ何十年も来てくれている季節工さんなど、様々な人達が集まっていますが、チームワーク抜群ですよ。みんな元気が良く、すごく真面目で、一人一人が色々なことを考えていますが、それを杜氏としてまとめていくことは、大変でもあり、また面白いところでもあります。」
なるほど、みんなで協力し合っていけるチームワークと、それぞれの個性を大切にしているのですね。

最後に森本 杜氏に高砂酒造が目指すものを伺ってみました。
「市場に出荷する酒でもっと多くの皆様に「おいしい」を言っていただけるように、新酒鑑評会で金賞をとることももちろん大切ですが、普通に買って呑んでいただけるお酒をもっとおいしくできたらという思いがあります。ですから、金賞を受賞するようなお酒以外の大吟醸クラスで(自分なりの酒造りへの挑戦を)色々とやってみたいと思っています。蔵人や自分自身のやり方も含めて、まだまだ全体的にレベルアップし「もっといい酒ができる」と思っています。そのためには、日々の仕事の精度や確度を上げていかなければ。と、それはもう毎日考えています。
 春まで毎日続く酒造りですが、「その日にやる仕事」を怠らないでやっていくことが一番大事だということです。「明日でいいや」は絶対ダメですね。」
ほかに杜氏として気をつけていることは?とお聞きしたら。
「決めなきゃいけない場面では迷わずにすばやく決めることです。発酵はドンドン進んでしまうので、アクシデントがあったときに限らず、すばやく決断することを常に意識しています。」
森本 杜氏の「探究心」と高砂酒造の皆さんの「チームワーク」で「もっといい酒」が飲める日をしばし待ちましょう。

チームワークを大切に雪中貯蔵も毎年の恒例作業
「もっといい酒」が呑める日を