水・米・技の紹介

江井ヶ嶋酒造株式会社

故郷・播磨の本物酒を求めて、丹波流の真髄を学び続ける若き杜氏

故郷・播磨の本物酒を求めて、丹波流の真髄を学び続ける若き杜氏

江井ヶ嶋酒造では、明治22年(1889)に竣工した大歳壱番蔵(大歳/おおとしは、地名に由来)を始めとする7つの木造蔵が、ゆかしい風情を漂わせています。
そのほとんどは創業者・卜部 兵吉の時代に建てられ、数々の銘酒とともに、地元の人々の仕事と暮らしを育んできました。また、各蔵ごとに酒職人の故郷・丹波から杜氏と蔵人がやって来て、お互いの酒造りを競い合ったそうです。

そんな丹波流の技と心を受け継いで、2016年から杜氏として腕を振るっているのが中村裕司氏です。

心に残る酒造りをめざして

中村 裕司杜氏 1971年生まれ(兵庫県尼崎市出身)

清酒造りのきっかけについて

「私は学生時代にBarやレストラン等の飲食業でアルバイトをしてお酒が好きになりました。飲むのも好きですが、そのお酒の歴史や原材料、製造方法などを調べるのが楽しくなり、いつしか自分でも酒を造ってみたいと思うようになりました。
しかし、大学は文系だったので、一度は営業職に就いたのですが、何か物足りなく、仕事を辞めて、好きな酒造りをするために、新潟へ修行に行きました。新潟は後継者不足である酒造りの仕事に、積極的に若手を採用しており、知識も経験もない私に、蔵を紹介していただきました。
新潟で4年間酒造りをした後、縁があって奈良の蔵の社長さんに誘われ、その蔵で杜氏になりました。」

酒造りの技とこれからの清酒神鷹について

「奈良では多くのことを学びました。奈良で15年杜氏を務めた後、江井ヶ嶋酒造が杜氏を探しているという話を聞いて、生まれ故郷の兵庫県で酒造りをしたいと思い、自ら申し出て、2016年に清酒神鷹の杜氏として就任しました。
これからは昔からの神鷹の味を守りつつ、新しい神鷹の酒も造っていきたいと思っています。
奈良では生酛系の元祖である水酛を学びました。水酛は室町時代に確立された製造方法で、独特の酸と味わいがあります。兵庫県ではまだどこの蔵もこの製造方法を取り入れてないので、個性的な新しい神鷹の酒として発信できると思います。水酛は味わいがしっかりしているので、これまでの辛口の神鷹とは正反対のお酒ですが、明石の名産であるタコや鯛の煮付けはもちろん、チーズなどもよく合います。冷やでも美味しいですが、ぬる燗もお勧めします。
それから吟醸酒ですが、これまでの大型の仕込みを止めて、少量の仕込みに変えました。具体的に言うと、米研ぎを機械洗いから手洗いに変えて、蒸米を連続蒸米機から甑(こしき)に変えました。そして麹は機械製麹から箱麹法にしました。これにより10kg単位での作業が可能となり、手造りの丁寧な酒造りができるようになりました。

最後に酒造りは人造りと言われています。おいしいお酒をみなさんに飲んでいただくように蔵人一丸となって、心を込めて造っていきますので、新しい神鷹をよろしくお願いします。
私の造りたい酒は『舌ではなく、心に残る酒』です。飲む方全ての心に残るように、これからも頑張って造っていきます。」